新型コロナを終わらせろ

重症化しづらい若者の感染が集団免疫をつくる インフルエンザに学ぶ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 政府は4月にも新型コロナウイルスの感染症法上の分類を現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行する考えだという。屋内でのマスク着用も発熱などの症状がある人を除き、原則不要になる。

 むろん、こうした措置はいきなりではなく、段階を踏んで実施されることになる。ところが、こうした「新型コロナ終結に向けたシナリオ」に待ったをかける人も少なくない。いわく「感染対策の緩みから感染が増えたらどうする」というのである。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師は、「一律に感染対策を緩めるのではなく、感染対策を緩和する人たちと今以上にケアすべき対象を見極め、有効かつ具体的な感染予防措置を取ることが大切」と言う。

「自分の意思で症状を伝えられない乳幼児は症状があれば必ず受診でき、容体が急変したらすぐに対応できる体制づくりが大切です。乳幼児は新型コロナウイルスのレセプターが少ないので感染しづらい。とはいえ、感染すると急変する場合があります。60歳以上の高齢者本人や周囲にいて面倒をみたり接触する人はマスク着用による飛沫感染予防、空気の流れをつくってエアロゾル感染予防などを徹底する必要があります」

 理由は最近の新型コロナによる死者は60代、70代以上に集中する一方で10歳未満もわずかながらいるからだ。実際、昨年12月7日から今年1月3日までに亡くなった人のうち、年代がわかっている5825人を調べたところ、60代以上は5664人(全体に占める割合97.24%)、70代以上は5368人(同92.16%)で、10歳未満が4人(同0.07%)だった。

 その一方で10代から20代で亡くなったのは9人(0.16%)。どういう状況で亡くなったかはきちんと調べる必要がある。ただし、治療薬も治療のためのスキームもある程度確立したなかで、最も健康で自分で症状を周囲に伝えられるはずの年代で亡くなるということは、いまの医学では救えないケースだった可能性もある。残念ながら、いまの医療には限界があることを私たちはいま一度認識しなければならない。

■若い世代の自然免疫獲得が高齢者や乳幼児を守ってきた

「そのうえで集団免疫について考え直す必要があると考えます。現在の新型コロナの新規感染者を見ると若い世代は無症候性感染が多い。これはウイルスの毒性が弱まり、ウイルスが元気な若者を感染させても発症させるだけの力を失ったからではないか、と考えています。だからこそ私は、インフルエンザに学び若者が集団免疫の中心になることが可能だと考えています。ワクチン接種による免疫も大事ですが、接種者をいま以上に増やすことは難しいため、感染による自然免疫を繰り返し獲得し続けることと重ね合わせることで継続的に集団免疫を獲得し、ウイルスを寄せ付けない。人類がワクチンや治療薬もない時代にも、さまざまな感染症から集団を守れたのは、若い世代が無症候感染により自然免疫を獲得することで集団免疫が確立され、それが少数の高齢者や乳幼児を守ってきたのではないでしょうか。それを考えればいま、若い世代を自由闊達に活動させることは集団免疫の面でも重要ではないでしょうか」

 国立感染症研究所は、感染症予測調査事業として「インフルエンザ感受性試験」を行い、ワクチン接種前や流行前の年齢別抗体保有状況を調べているが、若い世代の抗体保有率が高いことがわかっている。それはその前のシーズンに若者ほど季節性インフルエンザに感染して抗体を持ち続けているからだろう。

「私たちは季節性インフルエンザからいま学ぶべきではないでしょうか。むろん、若い人全員が免疫力があるとは限りません。持病などの問題で免疫力の弱い若者もいますから、そういう人はワクチンの継続的な接種などの個別な対応が必要で、一律に判断することはできません。しかし、前回述べた『心の問題』も考えれば、元気な若者から新型コロナの終わりの始まりをスタートさせてはどうでしょうか」

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