寒い冬の朝の頭痛には想像以上の血圧上昇の恐れあり…頭痛治療専門医が警鐘

雪が降る中、福岡・天神の繁華街を歩く人たち(C)共同通信社
雪が降る中、福岡・天神の繁華街を歩く人たち(C)共同通信社

 最近、朝に頭痛がひどい。そんな場合、血圧が想像以上に上昇し、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高くなっている可能性がある。東京女子医大病院脳神経センター頭痛外来客員教授の清水俊彦医師(日本頭痛学会認定専門医)に話を聞いた。

 高血圧と言われたことがない人も、油断は禁物だ。血圧は変動するため、知らないうちに血圧が上昇していたということが起こりうるからだ。

 血圧変動にはストレス、加齢などさまざまな要因が関係するが、いま注意すべきなのは、まず「冬の寒さ」。

「一年のうちで最も寒いシーズンである1月、2月は、手足の末梢血管が寒さで収縮するため、体内の大きな動脈の血液循環量が増加し、通常より収縮期血圧が10~20(㎜/Hg)ほど上昇しがちになります。さらに、年末年始の宴会やお節料理などは塩分が多く、それも冬に血圧が高くなる要因になります」

 次に「朝」。健康な人でも朝は血圧が高く、夜は低いのだが、問題は、朝目覚める直後に血圧が急上昇する「モーニングサージ」だ。

 夜と朝の収縮期血圧(上の血圧)の差が55以上あるとモーニングサージに該当する。日本人約2万1000人を対象にした研究では、日中は正常血圧にもかかわらず朝だけ血圧が高い人は、脳卒中や心筋梗塞のリスクが2.47倍高いと報告。日中血圧が高い人の脳卒中・心筋梗塞リスクが1.46倍なので、単純比較ではあるものの「朝だけ高血圧」の方が命に関わる病気のリスクが高いことになる。

「冬でもともとの血圧が高めのところに、モーニングサージが加わると、脳卒中や心筋梗塞のリスクがより高くなる。日頃から血圧測定をしている人でなければ、血圧の変動に気付きづらい」

「自分の血圧は正常」と思っている人なら、なおさらだ。

■降圧剤が頭痛に効くケースも

 そこで気をつけたいのが「頭痛」だ。この症状があったら、急激な血圧上昇が疑われる。

「血圧が急に高くなると、脳の血圧を調整する機能がうまく働かず、脳に送られる血液が増えすぎて脳全体がむくみがちになります。脳硬膜や橋静脈周囲に分布しているセンサーの三叉神経が刺激され、頭痛や頭重感が誘発されるのです」

 一般的に高血圧で頭痛が起こるのは、“上の血圧”が150~180以上と、非常に高くなったとき。しかし、通常よりも少し高いレベル、あるいは正常血圧(上120未満、かつ下80未満)との境界線上でも頭痛が起こる場合がある。

「収縮期血圧が130~140くらいの血圧で頭痛が起こるイメージは、医師でもあまり持っていないかもしれません。しかし片頭痛体質の人では、三叉神経が通常よりも過敏性が高いため、正常血圧との境界線上でも頭痛が悪化することが珍しくないのです。特に冬の早朝、血圧が上昇気味になるため、早朝や起床時に、頭の片側がズキンズキンと脈打つように痛む片頭痛発作が起こりやすい」

 頭痛はつらい症状ではあるが、血圧上昇発見、ひいては脳卒中・心筋梗塞回避につながると考えれば、そのチャンスを逃してはいけない。

 清水医師は、冬、早朝や起床時に頭痛を起こす、または悪化する患者には、血圧低下&頭痛緩和の効果がある降圧剤を処方している。

「冬の早朝、高血圧で頭痛がある場合に効く降圧剤として、β遮断薬があります。欧米の研究で、β遮断薬には脳神経細胞の異常な興奮を抑制する効果もあり、片頭痛発作に効くことが判明しています」

 ただ、β遮断薬は片頭痛発作時の頓服薬リザトリプタンと併用禁忌であり、ぜんそく患者にも使えない。

「それもあり、最近はアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)という降圧薬の処方も増えています。脳血管安定作用や脳血管保護作用があり、片頭痛予防に有効であるという研究結果が欧米で発表されています」

 冬の早朝、頭痛がある人は頭痛専門医に相談を。

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