足を失わないためのフットケア 血流が低下する冬だからこそ気をつけたい

靴の中の蒸れは大敵
靴の中の蒸れは大敵

 いまは一年間で最も血糖値が高くなる時期だ。年末年始の暴飲暴食に加えて寒さから運動不足になりがちで、健康な人でも血糖値が悪化し、糖尿病の人は病状が進む。その予備群の人は糖尿病を発症する可能性が高くなる。そこで注意したいのがフットケアだ。糖尿病の人は神経障害や血管障害による血流の低下で足の血管が詰まり、足先が壊死を起こす可能性があるからだ。最悪の場合、下肢切断に発展することもある。そこまでいかなくても、糖尿病で足に潰瘍ができる人は短命になりがちとのデータもある。では、どのようなフットケアをすべきか? 日本糖尿病協会療養指導医で「北品川藤クリニック」(東京都品川区)の石原藤樹院長に話を聞いた。

「糖尿病の人は血糖コントロールが不良な状態が続くと神経障害が進行して血行が悪くなります。さらに高血糖が続くと免疫力が低下して皮膚への細菌感染が広がり、足に深刻なダメージを起こす可能性がある。まずは、そのことを知っておいてほしい。それは最悪、下肢切断につながり、死亡率も高くなります。それを回避する予防策として、フットケアが重要なのです」

 実際、九州大学医学部が2018年に発表した福岡県糖尿病患者データベースを使った「日本人2型糖尿病患者における糖尿病足潰瘍の実態」によると4870人の2型糖尿病患者(平均年齢65歳)を5.3年追跡調査したところ、74人が糖尿病性足潰瘍を発症し、12人が四肢切断となったという。

 また、この研究では糖尿病性足潰瘍と四肢切断の発生率は年間それぞれ0.3%と0.05%で、5年生存率は糖尿病性足潰瘍があるか、その既往歴がある人は87.7%で、ない人の95.3%に比べて有意に低かった。

「糖尿病の人の中には視力障害が出ている人もいて、足の異変に気づいていないことが少なくありません。患者さんの中には足先に壊疽が始まっていたり、足が細菌感染してパンパンに腫れてようやく受診する人もいます。深刻なのは中高年の独身男性です。生活が乱れていて血糖コントロールがうまくいかず、足に潰瘍ができ、壊疽が始まっていても家族がいないから指摘してもらえない。水虫、爪白癬などを患っている人は注意してほしいのに危機感が足りません」

足の裏やかかとまでよく観察する
足の裏やかかとまでよく観察する
手鏡で足をじっくり観察する

 そんな石原院長が足の健康を保つために最も大切だというのが足の観察だ。毎日、手鏡を使って足の裏やかかとを含めてじっくり観察することだという。

「切り傷や亀裂、水疱、乾燥肌、赤みなどがないか、手鏡を使って丹念に見るようにしましょう。問題を発見したら、すぐに糖尿病や足を専門に診ている医師に相談することです」

 靴にも注意したい。多くの働く男性が履く革靴は通気性が悪く汗がこもりやすい。とくに雨や雪が降ったときは靴の中に湿気がたまり、蒸れやすくなる。

「靴の中が蒸れると細菌が発生し、感染が広がりやすくなります。足が湿ったと感じたら乾いたタオルで足を拭き、靴下を取り換えましょう」

 もちろん、靴は清潔に保つ。毎日同じ靴を履いてはダメ。数足の靴をローテーションで使い、乾かすようにする。

「お風呂上がりなどに足全体に保湿クリームを塗るのもいいでしょう。冬場は想像以上に乾燥しており、足の裏やかかとがひび割れることがあります。そこから細菌感染が起こることもあるので気をつけましょう」

 糖尿病の合併症で最も早くあらわれるのが神経障害。糖尿病の人は皮膚の知覚障害を起こしているため、熱さや痛みを感じにくい。そのため、低温やけどに注意が必要となる。

「神経障害が進行すると皮膚の温度に対する感覚が鈍るため、電気毛布やストーブなどの暖房器具を長時間使用している間に低温やけどを負ってしまうことがあります。糖尿病の人は足の動脈が細く、詰まりやすくなっているために、傷に血液が十分行き渡らず、傷の治りが遅れがちです。『このくらい、放っておいても大丈夫』なんて思っていると、足潰瘍や壊疽の原因となってしまいます。下着などに貼り付けるカイロの使用には十分な注意が必要です」

 冬場の糖尿病のケアは、まず足の観察から行うことだ。

関連記事