■海馬の歯状回の細胞サイクルが低下
というのも、甲状腺ホルモンは、脳神経細胞の分化による脳の形成・発達に関係しているから。甲状腺機能が低下すると、記憶力や認知機能を担う脳の海馬の歯状回の細胞サイクルが低下するのです。“海馬の歯状回”は、脳で細胞が新たに生まれ変わる場所で、この歯状回を介して海馬内に神経サイクルが生まれ、新しい記憶そのものになると考えられています。
ある報告では、75歳以下の潜在性甲状腺機能低下症の人では、そうでない人に比べて認知障害が1.56倍、認知症が1.81倍多いと報告されています。しかし、甲状腺機能低下症は、これまで紹介してきた「治る認知症」と同様に、甲状腺ホルモン投与という薬物治療によって、認知機能を取り戻すことができます(甲状腺機能低下症に伴う認知機能低下の場合。甲状腺機能低下症とは別に認知症を発症している場合は話が別です)。
認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う