新型コロナを終わらせろ

いまこそマスクの効果を検証し必要な人と場面を示すべき

演説前にマスクを外す岸田首相
演説前にマスクを外す岸田首相(C)日刊ゲンダイ

 感染症法の2類相当扱いの新型コロナウイルス感染症を季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げるという。それに伴い、現在「屋外は原則着用不要、屋内は一部を除いて着用推奨」のマスクは、「今後は個人の判断に任せる方向で、緩和時期を調整する」という。しかし、これはおかしいのではないか。マスクは誰に、どの場面で必要で、どう使うべきか、との検証と判断は政府がやるべき仕事ではないか。それをスルーすることはマスク着用の科学的根拠はなかった、との誤ったメッセージを発することにならないのか? 公衆衛生に詳しい岩室紳也医師が言う。

「私は新型コロナ予防にマスクがまったく役立たないとは思いません。一般的に若くて健康な人は感染していれば無症状でもウイルスを含んだ飛沫(ひまつ)やエアロゾルを排出していることを認識すべきだと思います。高齢者の重症化率や致死率が季節性インフルエンザと変わらなくなったいまこそ、その認識のもとマスクの意味を再検証すべきです。それも完璧なマスク装着法の周知徹底は無理だという視点で。マスクは感染している人から飛び出す飛沫を防ぐ効果はありますが、エアロゾルの排出や吸入を阻止できません。だからこそマスクが必要な人や場面、使い方も変わるべきだと思います。それを示さずに、一律に『マスク着用は個人の判断』というのは乱暴で、無責任ではないでしょうか」

 岩室医師が考えるマスクが必要な人とは、感染リスクが高く、重篤化しやすい、基礎疾患を持っている60歳以上の人と直接接する病院職員や介護職員、同居している家人など。必要ないのは子供たちや若く元気な人、周囲の人と接しない寝たきりの高齢者など。

■半減した国内出荷量が物語るもの

「現在、新型コロナで亡くなる人の95%以上は60歳以上の高齢者です。この人たちに直接接する人は本人に自覚がなくても感染している可能性があると考える必要があります。そのため高齢者と面と向かって飛沫のやりとりをする可能性がある場面になった時、不織布マスクが不可欠です。逆に高齢者が周囲の人にうつす可能性については、高齢者の行動をチェックし、直接ウイルスを含んだ飛沫や唾液を浴びるなどの状況ではない限り、マスクは不要だと考えます。とくに寝たきりの高齢者が吐き出す飛沫が周囲の人の顔に飛んでくる可能性が少ないため、寝たきりの人がマスクをする必要はないのではないでしょうか? 子供たちは身長が低いため、立っている大人の顔に飛沫をかけることはあまり考えられません。子供はマスクを正確に長時間着用できませんし、寝たきりの高齢者にとってはかえって危険です。むしろ、表面を触ったりといった不適切な扱いによりマスクが感染源になりかねない。飛沫感染対策のためのマスクとは異なり、エアロゾル感染対策は、空気の流れをつくってエアロゾルを拡散、排気する。マスクより空気の入れ替えをしっかりすることが大切ではないでしょうか」

 そもそも日本人のマスク着用が衛生的だったかは疑問だ。厚労省発表の「マスク等国内生産・輸入実態把握調査」を見ると、医療用サージカルマスク(不織布)の国内出荷量は新型コロナ前の平成31年4月~令和元年12月が10.6億枚、令和2年1~12月は16.1億枚、令和3年1~12月は8.5億枚となっている。これを見る限り、長期間同じマスクを使っていたり、効果の乏しい不織布以外のマスクを使っていて、単にエチケットのための着用だったとの推測も成り立つ。

 未知なる感染症が今後出てくる可能性もある。政府は、いまこそ、誰がどのような場面でどうマスクを使うべきか。しっかり検証して国民に知らせるべきではないのか?

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