認知症を予防する補聴器のすべて

補聴器は買えばOKではない 資格を持った専門家の調整が大事

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 資格を持った専門家が調整することが補聴器の満足度の高さにつながる──。それを示す調査結果が先月末に発表されました。補聴器メーカーなどで構成される「日本補聴器工業会」などが実施したもので、日本における難聴者率や補聴器装用率などの最新の実態調査となります。

 それによると、日本と欧米主要各国を比べた場合、難聴者による補聴器の所有率は欧米が50%近くであるのに対し日本は15%。満足度は前回より向上し、中でも認定補聴器技能者という資格者が販売した補聴器の満足度が高いという結果でした。

 以前、64歳の奥さまにご来店いただいたことがありました。仲良しの旦那さんとよく旅行に出かけられる快活な方なのですが、15年くらい前から少しずつ聞こえづらさを感じるようになり、新聞に載っていた補聴器を通販で購入。しかし雑音や環境音が頭に響いて煩わしく、それでいて言葉はわかりづらいことから、たまにしか使用していなかったとか。

 お持ちの補聴器を拝見すると、調整ができない簡易的なタイプ。補聴器は調整が重要であることを伝え、まずは貸し出しで試してもらい、3週間ほど毎週調整に通っていただきました。購入後も調整を重ね、2週間後に行った和歌山旅行の旅先では、これまでは聞き取れなかった、不意にかけられる何げない会話をいろんな人と楽しんだと言います。今では「補聴器の調整を頑張ったから、こんなに活動的に過ごせる。人生が楽しい」と喜んでいただいています。

 前述の調査では、日本の補聴器の全体の満足度は50%で、認定補聴器技能者の調整を受けた場合は64%。欧米諸国では満足度70%以上ですので、日本でのこの数字はもっと伸ばせるはずです。

 2020年、国際アルツハイマー病会議の委員会で「予防可能な40%の12の要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子である」という指摘がなされました。世界に先駆けて超高齢社会を迎えている日本では、「高齢者と難聴」の問題は、「認知症と難聴」の問題とも相まって喫緊の課題です。補聴器を使いこなすことの一助に私たちももっと尽力するよう姿勢を正す調査結果となりました。

田中智子

田中智子

シーメンスの補聴器部門でマーケティングの勤務を経て、2020年補聴器販売会社「うぐいすヘルスケア株式会社」設立。認定補聴器技能者資格保持。

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