新型コロナを終わらせろ

コロナ禍で増え続ける「自殺」は3月が最も危ない…10代20代も増加

おしゃべりする機会を増やすことが大事
おしゃべりする機会を増やすことが大事

 自殺の増加が止まらない。警察庁が令和5(2023)年1月12日に集計した「令和4年の月別自殺者数について」によると、日本の22年の自殺者総数は2万1584人。平成15(03)年の3万4427人をピークに、令和元年には2万169人まで減少したが、日本に新型コロナの上陸が確認された令和2年には2万1081人と増加。令和3年も2万1007人となった。

 総数以上に気になるのは、10代、20代の自殺が目立つこと。年齢階級別自殺者数の年次推移によると、令和元年で659人だった10代の自殺は令和2年が777人、令和3年は749人、令和4年は789人と高止まりしている。20代も令和元年の2117人から令和2年には2521人に跳ね上がり、令和3年には2611人、令和4年は2452人となった。しかも令和3年には、平成29年から0人だった10歳未満で1人の自殺が報告されている。

 学生・生徒の自殺も令和元年は888人だったが、令和2年には1039人と151人も増えている。令和3年も1031人となっており、令和4年は1058人(うち小学生17人)にまで増えている。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師が言う。

「自殺者が増えているということは、その予備軍は何倍も多く、思い詰めている人が非常にたくさんいるということでしょう。その一因は表情を見せあう会話の減少ではないでしょうか? おしゃべりは社会との接点をつなぐ窓口です。コロナ禍で若い女性の自殺が増えたことが話題になりましたが、元来、女性は男性に比べてコミュニケーション力が高く、自殺する人は男性の約半分。コロナ禍で女性の自殺が増えたのは、集まっておしゃべりすることがしにくくなったからでしょう。若い人の自殺が増えたのも、おしゃべりできないことで無意識のうちに悩みを解消する機会が減り、孤独感や不安感、将来に向けての焦燥感や絶望につながり、死を選択するとも考えられます」

■おしゃべりをしよう

 英国では「現代の公衆衛生上、最も重要な課題のひとつ」として、18年に世界で初めて「孤独担当大臣」を設けた。孤独は肥満や1日15本の喫煙以上に体に悪く、孤独な人は社会的なつながりを持つ人に比べて天寿を全うせずに亡くなる割合は1.5倍に上るとの調査結果などが発表されたからだ。英国では孤独解消のひとつとしてコーヒーチェーン店内に知らない人同士が囲む専用の「おしゃべりテーブル」を設置しているという話もある。

「政府は自殺防止というと電話やネットでの相談窓口を増やすことに躍起になっていますが、自殺を考えている人は自分で打ち明けられないからこそ悩むのであって、根本的な対策にはなりません。大事なことは、孤独、孤立を感じる前におしゃべりを通じて社会との接点を増やす機会を設けることです。そのためには、まず新型コロナ感染の重症化リスクが低く、健康な人からマスクを外し、対面しておしゃべりする機会を増やすことではないでしょうか? 持病があったり、リスクがある人と話すときは、距離を保つとか、飛沫を浴びないよう斜めに座るといった工夫をする必要がありますが、会話だけでは伝わらない表情や振る舞いによるコミュニケーションを復活させるためにも、マスクを外して対面でおしゃべりするべきだと思います」

 警察庁によると、22年の全国の刑法犯罪は約60.1万件と一昨年より5%以上増え、20年ぶりに前年を超えて増加した。このうち自転車の窃盗や暴行や傷害といった街頭犯罪は約20.2万件と前年比2.6万件増えている。

 警察庁では、この原因は新型コロナが落ち着き、外出する人が増えたからと分析しているという。その背景には、社会に蔓延するイライラ感や孤立により、自分では解決できないとの思い込みがあるのではないか。

 3月は1年間で最も自殺する人が多い。社会を活気づけ、孤立や孤独から追いつめられる人を減らすためにも、若い人からマスクを外しておしゃべりをすることから始めてはどうか。

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