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サイレントマニュピレーションで腕を上げられるようになった

写真はイメージ
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「ユーチューブで見ました。あんなに肩が動くようになるなら、頑張って治療を受けてみます」

 五十肩が進行して、難治性になった患者さんに、「サイレントマニピュレーション」を提案した時のことです。動かなくなった肩に麻酔をかけて動かし、関節の柔軟性を取り戻す──と言っても想像つきにくいですよね。最近は、治療法を紹介したユーチューブもあるので、患者さんに理解してもらいやすくなりました。

 さて、治療当日です。「エコーで神経を見ながら、神経の周りに麻酔薬を注入しますね」と私。患者さんの反応は、「(首に刺した)注射はあまり痛くない。え、もう終わったんですか?」でした。

 麻酔が効いてくるまでしばらく待ちます。10分後、感覚がなくなったのを確認し、患者さんの腕をつかみ、さまざまな方向へ動かし始めました。

「あ、痛くない。(違う方向へ動かすと)その部分は今、少しだけ痛みがあるような」

「この処置は麻酔が効いていないとできませんから、大丈夫ですよ」

「なんか変な感じ。自分の肩が動いてる感覚がない。あれ、変な音がしましたよ。どこが『サイレント』なのですか?」

「音は関節包という関節の袋が破れた音ですね。従来の手法より、この音が小さいためサイレン(静かな)と名付けられたんです。もう終わりました。どうですか?」

 こんなやりとりの後、施術するまでは腕がほとんど上がらなかったのですが、「頭に手をやる」「背中に手を回す」ができるようになりました。

「先生が(腕を)持ってくれていますが、反対の肩に手が触れているのがわかります。背中にも!変な気分……」

 1週間後、来院した患者さんが言いました。

「今までできなかった洗髪や、高いところに手を伸ばすことができるようになった。もっと早く受けとけばよかった。リハビリに取り組む意欲が湧いてきました!」

 改めて、サイレントマニピュレーションという治療法があることを、多くの人に知ってもらいたいと思いました。

森大祐

森大祐

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

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