女性特有の体の不調や妊娠、出産などに伴うトラブルは、昔から鍼灸治療が得意とする分野の一つです。
鍼灸臨床の最古の専門書として知られる「鍼灸甲乙経」には「婦人の雑病」の巻があり、またその後に出た「鍼灸大成」にも月経周期のずれや不妊症、乳腺炎などに用いるツボについて記述があるほどです。
ちなみに鍼灸治療が有効とされている代表的な婦人科系疾患としては、更年期障害、生理痛、不妊症、つわり、逆子の5つが挙げられます。
更年期障害では、鍼灸で陰陽のバランスを整え、滞った気や血の流れを良くし、漢方薬を併用して症状を改善させます。生理痛では、特に痛みが重症な月経困難症に対し、高い効果を発揮します。
東洋医学を正しく知って不調改善
「婦人病」に効く鍼灸はある? 最古の専門書にも記述あり
不妊症に対して、鍼灸治療はストレスを緩和してホルモンバランスの崩れを整え、子宮や卵巣がある骨盤への血流を改善、性ホルモンの活動を活発化するなどの効果が見られます。また、病院の不妊治療に見られるマイナス的反応、例えば排卵誘発剤の使い過ぎによる副作用に対して、鍼灸や漢方薬との併用で、その副作用を軽減することもできます。
つわりには、刺さない鍼(てい鍼)やお灸が有効。出産前には、足の小指にある「至陰」というツボを鍼灸で刺激することで、逆子が治り、自然分娩が可能となるケースが少なくありません。
産道がなかなか開かず出産に時間がかかってしまう場合や、産後に「乳汁分泌不全」により赤ちゃんに満足に授乳できない場合などにも鍼灸は効果があります。昔から培ってきた経験や技がたくさんあり、現在も受け継がれているのです。