新型コロナを終わらせろ

ワクチンは基本年1回へ 夏にパンデミックが来ない前提でいいのか

4回目の接種を受ける岸田首相(C)共同通信社
4回目の接種を受ける岸田首相(C)共同通信社

 厚労省の専門部会が新型コロナワクチンについて次の接種を今年の秋冬に行うべきとの対応方針案を固めたという。対象は全員で、重症化リスクのある高齢者は前倒しして追加接種を行うという。厚労省が同部会に提出した資料では、その根拠として①新型コロナとワクチンのこれまでの経緯②ワクチンの有効性等に係る新たな知見③海外での状況④今年以降の接種について報告された。

 このうち①については従来型ワクチンの3回目接種完了者は全体で68.1%、高齢者は91.1%などで、オミクロン株対応ワクチンの接種率は全体で42.3%、高齢者で72.3%だった。

 ②のうちオミクロン株対応2価ワクチンの有効性については、米国の薬局約1万店で得られた今年1月までの2カ月間のデータを掲載。追加接種2~3カ月の発症予防効果は従来型2~4回接種者に比べ、BA.5系統に対して18~49歳で52%、50~64歳で39%、65歳以上で32%だったとした。

 追加接種後15~99日間の入院または死亡に対する効果は、米国ノースカロライナ州のデータでは従来型ワクチンで24.9%に対して61.8%だった。

 従来ワクチンの入院予防効果については、英国のデータから1、2回目接種後15カ月以降で40.2%、3回目接種後12~14カ月で52.3%。従来型ワクチン接種による死亡予防効果は1、2回目接種後40週間以降で49.7%、3回目接種後40週間で56.9%、4回目接種後20週間以降で68.2%とした。

 ハイブリッド免疫(新型コロナ感染およびワクチン接種の両方により得られた免疫)の有効性については、計26の研究評価から、1、2回目接種または最終感染後12カ月の入院または重症化予防効果は97.4%、再感染予防効果は41.8%。3回目接種または最終感染後6カ月の入院または重症化予防効果は95.3%、再感染予防効果は46.5%だった。

 またオーストラリアと米国の研究として、ノババックス(武田)社ワクチン追加接種のオミクロン株BA.1、BA.4/5に対する有効性について、接種から約6カ月後の中和抗体価幾何平均値は祖先株、BA.1、BA.4/5に対してそれぞれ4367.0、674.9、1224.0だったとした。

■インフルエンザと同じ状況ではない

 日本では新型コロナの上陸が確認された最初の年にPCR検査などで陽性とされたのは約23万人で死者は3400人、2年目までで約173万人感染し約1.8万人が死亡。昨年までで約2921万人が感染し約5.7万人が亡くなった。

 国は昨年の惨事をオミクロン株の登場とその対応型ワクチンの接種率が低かったせいだと言いたいのかもしれない。そのうえで、国の指示通りワクチンを打ってさえいれば、新型コロナウイルスの活動が活発になる秋冬に1度のペースでワクチンを打つという海外の方針に従えばある程度のリスクは抑えられる、と考えているように見える。しかし、これはインフルエンザと同じで新型コロナは夏に流行しないことを前提にしているということだ。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師が言う。

「疑問ですね。北半球でインフルエンザが夏流行しないのは、ワクチンを打っていない大多数の人が冬に感染することで抗体を得る集団免疫の効果が半年続くからです。しかし、いまの新型コロナはそこまでの感染の広がりはありませんし、ワクチンの接種率は低い。インフルエンザと同じ状況ではない。きっかけさえあればいつでも感染拡大すると考えます。まして新たな変異株が出てこないとも限らない。少なくとも今年は大丈夫ということではないと思います」

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