がんと向き合い生きていく

今度は自分で旅行に…肺がんで脳転移もわかった祖父からのメール

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「放射線治療と薬がよく効いて、がんは落ち着いています。それでもステージ4の進行がんなので、もしかして今が一番良い時かもしれません。再発すると、今度は厳しくなると思います。旅行など、今のうちに行けたらよいと思いますが、何しろコロナが蔓延していますので、むしろ、自宅でのんびりされるのも方法かと思います」

 祖父は「分かりました。ご親切にありがとうございました」と答えていました。

 退院後の祖父は普通に歩けるようになり、元気でした。12月のある日、祖父から母と私にメールがありました。

「どうしても見ておきたいと思って、東尋坊、永平寺を回る福井の旅行を申し込みました。もう旅費も払ってあります」

 しかし、母は旅行に反対し、祖父、母、私の3人で話し合いました。その結果、旅行には私が行くことになり、旅行先から、随時、スマホで撮影した動画を祖父に見てもらうことになったのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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