がんと向き合い生きていく

今度は自分で旅行に…肺がんで脳転移もわかった祖父からのメール

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 入院中、私は医師の説明を聞きに2回だけ病院に行きました。しかし、医師からの説明を受ける場所は病棟の入り口に用意されている専用の部屋で、コロナ感染の心配から祖父には会えず、病室にも行けませんでした。

 もちろん仕方がないことなのですが、ふと、代理で福井を旅行した時、祖父にいろいろな状況をスマホを使って報告できて良かったなと思いました。まだスマホがそれほど普及していない10年ほど前だったら、それもできず、祖父に喜んでもらうこともなかったでしょう。祖父の脳転移がわかって、どうなるのか、もうダメなのか……と心配しましたが、現在はだいぶ良くなって退院し、ふらつきもなくひとりでそれまで通りの生活ができています。ひとり暮らしに戻った祖父からのメールには、「東尋坊に、今度は自分で行ってくる。やっぱり自分でカニを食べなくちゃあならない」と書いてありました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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