がんと向き合い生きていく

命を考える──恩師の人柄と考えに触れて思わされたこと

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 ある年の4月、某大学のT教授の定年退官記念パーティーが開催され、お世話になった私はその会に出席しました。近い座席に、私の母校の産婦人科教授だった品川信良先生がおられました。先生はおそらく80歳代の後半になっていたと思いますが、お元気そうで、学生時代に講義を受けた時とそれほど変わらないようにお見受けしました。

 たまたま私はカバンに拙著「がんを生きる」(講談社現代新書)を持っていたので、名刺代わりに差し上げました。

 それから約1週間後、品川先生からお手紙をいただきました。「講演に来て欲しい」とのことでした。びっくりしましたが、快諾し、3カ月後の初夏のある土曜日の午後、医師会の先生方が集まってくださり、「がんを生きる-命を考える-」と題して講演させていただきました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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