高齢者の正しいクスリとの付き合い方

ステロイドに「怖いクスリ」というイメージがついてしまった理由

ステロイドには塗り薬や吸入薬など多くの種類がある
ステロイドには塗り薬や吸入薬など多くの種類がある

 みなさんは「ステロイド」と聞くと、どのような印象をお持ちでしょうか? 高齢の方の中には、「ステロイドは副作用が怖いクスリ」というイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれません。一方で、病気の治療のため現在進行形でステロイドを使っている方もいらっしゃるでしょう。今回から続けてステロイドについてお話ししていきます。一通り読めば、なぜ怖いイメージがついてしまったのかについてご理解いただけるでしょう。

 ステロイドは、副腎皮質ホルモンのひとつです。副腎は腎臓の上にある臓器で、本来、ステロイドはそこで作られていますが、クスリとして用いられるものの多くは同じような構造(ステロイド骨格)を持つ化学的に合成されたものになります。つまり、元々体の中にあるホルモンをクスリとして使っていると考えてもらえれば、イメージがつきやすいのではないでしょうか。

 ステロイドはたくさんの病気の治療に用いられます。そのため、内服薬はもちろん、注射薬、塗り薬、吸入薬など多くの種類のクスリがあります。ステロイドは多彩な効果を持っていて、これが怖いというイメージを抱く原因のひとつになった可能性があります。

 かつて、ステロイドが今よりも気軽に処方されていた時代がありました。「乱用」といってもいいかもしれません。ステロイドは発熱があれば下げますし、食欲がなければ出します。痛みがあれば取りますし、元気がなければ出します。いわば“何にでも効く魔法のクスリ”のように思われていました。もちろん、すべてがそうであるということは絶対にありませんが、一部とはいえそうした考え方に基づいて使われていたケースがあったようです。

 前述の通り、ステロイドは本来、体の中にあるものです。しかし、クスリとして使う場合は体の中で作られる量をさらに上乗せする形になるため、副作用のリスクが高まります。ステロイドには効果と同じように副作用もたくさんあります。何にでも効くからいろいろな症状に使った結果、ステロイドのさまざまな副作用が出てしまい、これが怖いというイメージにつながったのかもしれません。ただ、これはあくまで過去の話です。

 では、現在はどうかというと、ステロイドによる治療が本当に必要な患者に対して、正しい使われ方がされるようになったため、こういったイメージを今のステロイドに当てはめるのは間違っています。副作用のリスクはもちろんありますが、このマネジメント=管理もかなり厳密にされているため、以前ほど心配する必要はありません。

 ステロイドは正しく使えばとても有効なクスリです。では、一体どのような病気の治療に用いられるのか。次回はステロイドの効果と用いられる主な病気について紹介します。

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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