マスク着用が個人の判断となった今こそ「体内マスク」に注目を!

 新型コロナウイルスの発生から3年余り。マスクの着用がすっかり当たり前となった今、今年5月から新型コロナウイルスが5類に移行されることを受けて厚生労働省では今月13日からマスクの着用を個人の判断に委ねるとした。はたしてその影響はいかに……?

■長期間のマスク着用がもたらす弊害

 マスクの着用が新型コロナウイルスを防ぐ効果的な対策であることは分かっていても「暑い」「息苦しい」「息がしづらい」「メガネが曇る」など、ここ数年多くの人々がマスクを着用することの不快感や不便さをいろいろと味わってきたはずだ。それが3月13日から着用するかしないかは個々人の判断となり、街中でも早くもマスクを外している人をたくさん見かけるようになった。

 しかし、久しぶりに以前のような日常が戻ってきたような安堵感がある一方で、マスク着用によって数年間、新型コロナウイルスの徹底的な感染防止対策を講じてきた人々にとって由々しき事態が起こり得るのではないかとの声も出ている。

 というのは、マスクをしていたことで体内に侵入してくるウイルスや細菌に対して戦ったり抵抗したりする、人間が本来持っている力「免疫力」が低下しているのではないかということが懸念されているからだ。そして、それはウイルスによって感染する新型コロナやインフルエンザにかかるリスクが高くなるということでもある。

 もちろん、そうした病気にかからないようにするためにはウイルスが体に入りこむきっかけをつくらないように注意することが大事だ。しかし、それ以上に気をつけなくてはならないのは、もしウイルスが体内に入り込もうとしてもそれを跳ね返すだけのカラダの免疫力を高めておくことなのだ。

■唾液に含まれる成分IgAに重要な働きが

 マスクを外すことで新型コロナやインフルエンザのリスクが高くなるとは聞き捨てならない話だが、人間のカラダというものはよくできたもので、病原体の侵入を防いでくれる「体内のマスク」とも呼べるものがもともと備わっているのだという。日本唾液ケア研究会・理事長で神奈川歯科大学教授の槻木恵一氏は、

「実は『体内マスク』としての働きに大きく関係しているのが唾液なのです。唾液は1日に1000~1500ml分泌され、口内細菌や食べかすを洗い流したり、唾液内に含まれる免疫成分で体内へのウイルスの侵入を防ぐというとても重要な役割を担っています。唾液は99%が水分で、残りの1%にさまざまな機能成分がふくまれています。中にはウイルスや細菌などの異物の侵入からバリアするような機能をもつものがあり、その中心的な役割を持っているのが『IgA』と呼ばれる免疫成分。このIgAが『体内マスク』としてしっかり機能してくれるのです」

 と説明する。

 ということは、唾液の量が少なくなるとIgAの作用が低下してカラダにさまざまな悪影響を及ぼし、唾液が本来持っている機能が十分に働かなくなる恐れが出てくることになるわけで、槻木教授も折に触れて唾液力の重要性を訴え続けている。

■腸内環境の状態がIgAの質を決める

 では、しっかりとIgAの効果を得るためにはどうしたらいいのだろうか。槻木教授に聞いてみると、食事によって唾液の質を改善することができるのだという。特に水溶性食物繊維が豊富に含まれる納豆やもずく、めかぶ、抗酸化物質が豊富な水出し緑茶がおススメだが、これらに加えて槻木教授は、

「IgAは免疫成分であるため、免疫との関わりが深い腸内環境のバランスが、唾液の質・IgA量にも関わっています。腸内環境を整える食品としてヨーグルトや乳酸園がありますが、実際にIgA量や濃度の増加に役立つことが分かっています」

 最近発表された研究成果では、健康な高齢者が一定期間R─1乳酸菌を摂ったところ、風邪の原因となるヒトコロナウイルスに対応するIgA量が増え、風邪の罹患率も減少したという。

 ひと頃に比べて新型コロナウイルスの感染は収まりつつある印象だ。しかし、だからといってまだまだ油断することはできないし、インフルエンザというもう一つの脅威もある。マスクを外す今こそ「体内マスク」を意識するべきではないだろうか。