じつは、手術中の血栓形成を予防するための輸液管理については、大規模な研究結果に基づいたエビデンスがほとんどなく、ガイドラインにも記載されていません。患者さんの全身状態を悪化させないための輸液管理については目標値が定められているのですが、血栓予防に関しては医師の経験で対応しているのが現状なのです。
近年、腹部手術などでは、手術での血栓形成を予防するために手術中から「フロートロン」という医療機器を使うケースも増えています。手術を受けている患者さんの足にサポーターを巻いて、一定時間ごとに空気圧で圧迫して静脈の血行を促進するのです。ちなみに、フロートロンは患者さんの肌に接触するため感染対策の観点から“使い捨て”が一般的でした。
しかし、それではあまりにもムダが多すぎるので、3年前にわれわれと医療機器メーカーが共同で研究を進めて再利用できるタイプを開発し、国内で初めて製品化しました。もちろん、順天堂医院で実施される手術で使われています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」