アメリカの保守州で、未成年のトランスジェンダーに対する医療を禁止する法律が、続々と成立しています。3月16日にはフロリダ州が、アメリカの8つ目の禁止州になりました。ケンタッキー州でもほぼ同様の法律が議会を通過。若いトランスジェンダーへの医療問題は、中絶禁止に続きアメリカの文化・政治的な戦いの焦点になっています。
今回の法律により、フロリダでは18歳未満の子供たちは、思春期の性徴を抑えるホルモン治療が受けられなくなります。この治療をすでに始めている人はそのまま続けることができますが、性別適合手術は禁止されます。これに対し親たちは、裁判に訴える意志を表明しています。
アメリカにはトランスジェンダーの若者はどのくらいいるのでしょうか?
ワシントンDCのシンクタンク・ピュー研究所の調べによれば、アメリカの18歳から29歳の3%が、自身をトランスジェンダーと自覚しています。また成人の4人に1人が、トランスジェンダーの友達がいると答えています。
興味深いのは、6割のアメリカ人が「性別は生まれ持ったものであるべき」と考える一方で、6割以上が「トランスジェンダーは社会で差別されるべきではない」と答えていることです。多くの人の気持ちが揺れ動きつつも、人権だけは等しく守られるべきと考えているのがわかります。
また、「トランスの人権を守るために社会が十分な役割を果たしていない」、と考える若者は47%。親世代の1.5倍以上で大きなジェネレーション・ギャップがあります。
しかしそれ以上に驚くのは政治的なギャップです。同じ質問に対しイエスと答えているリベラル民主党支持者は59%なのに比べ、保守共和党支持者はわずか10%にすぎません。つまり保守派であればあるほど、トランスジェンダーの権利を守ることには、非常に消極的となります。
これが保守州でのトランスの若者に対する医療禁止法につながっています。保守有権者の多くがこれを支持するため、政治家の票集めにはうってつけと言っていいでしょう。これは人工妊娠中絶と全く同じです。ちなみに反トランスジェンダーの最先鋒は、来年の大統領選で共和党の最有力候補とみなされている、デサントス・フロリダ州知事です。
こうした文化的、政治的な戦いの中で、中絶が必要でも受けられない女性たちと同様、トランスジェンダーの若者たちも、不透明な未来に向き合わなければなりません。
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