「マイクロCTC検査」で全身のがんを早期発見 1回5分の採血でOK

採決も含めて検査は5分で終わる(写真はイメージ)
採決も含めて検査は5分で終わる(写真はイメージ)(C)日刊ゲンダイ

 日本人の2人に1人が発症し、40代以降で最も死亡率が高いのが「がん」である。5大がん(肺がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、乳がん)では、ステージ1で発見された場合の5年生存率が94%なのに対し、ステージ4まで進行していた場合では23%と大きく低下するから、早期発見が重要だ。今年5月から1回5分の採血だけでほぼすべてのがんリスクを発見できる「マイクロCTC検査」が開始される。元順天堂大学医学部先任准教授で、株式会社セルクラウド執行役員CTC検査事業部長、代々木ウィルクリニック院長の太田剛志氏に聞いた。

 がんは1ミリくらいの大きさになると血管とがん細胞自身をつなげる新生血管をつくり、それを通して血管から酸素や栄養を吸収しさらなる増殖をしていく。その新生血管を通して血中に漏れ出したがん細胞を「CTC(Circulating Tumor Cells:血中循環がん細胞)」という。これを捕捉できる検査が欧米のがんの先端研究で大きな注目を集めるCTC検査で、この検査をさらに進化させたものが「マイクロCTC検査」だ。

 がんは、悪性度の低い「上皮性がん細胞」が悪性度の高い「間葉系がん細胞」に変化すると、浸潤・転移の高い能力を持つようになる。マイクロCTC検査は、この悪性度が高い間葉系のがん細胞のみを血液検査で特定し、個数まで正確に見つけだすことができる。それによりたった一度の採血だけで、白血病や、悪性リンパ腫などの血液のがん以外の全身のがんリスクを明確に発見可能だという。

「CTC検査は、国内のがん専門クリニックでも、採取した血液を海外の検査機関に送って実施しているところがあります。しかし結果が分かるまでに4週間ほどかかる上に、採血した血液は長時間経つと劣化が進むという課題がありました。実際、われわれの実験では採血した血液を抗凝固剤入りの採血管で保存しても、丸2日経てばまともに遠心分離できない状態になります。そこで、CTC検査に特化した国内初の検査センターを開設し、迅速かつ価格を抑えて検査を完結できるようにしたのです」

 どんな検査をするにしても、正確な結果を出すために血液は新鮮であることが重要だ。マイクロCTC検査は採血してから翌日には直営の検査センターに血液を輸送し、血液が新鮮な状態で検査を行う。日本の厚労省にあたる米国FDA(食品医薬品局)の承認をとっている米国C社の検査法でも特異度は83.35%であったのに対し、マイクロCTC検査では94.45%と、より高精度でがん細胞を検出できるという。

「検査は、マイクロCTC検査を導入している全国の提携クリニックへ来院していただき、採血も含めて5分程度で終わります。結果は1週間で判明します。検査を受ける際は食事制限等はありませんが、できれば直前に脂の濃い食事は避けてください」

■5月8日からスタート

 がんは、国内における死因のトップであるにもかかわらず、「時間がない」との理由で、がん検診の受診率は50%にも満たない現状である。時間に余裕がなく、普段、検診を受ける機会が少ない人でも、短時間で受けられるのがうれしいポイントだ。

「マイクロCTC検査で体内からがん細胞が発見されたからといって、必ずしもがんが発症しているとは限りません。しかし、少なくとも浸潤・転移の高い能力を持つ、悪性度の高い『間葉系のがん細胞』が体のどこかにあるということですから、あらためてより詳しい検査を受けることをおすすめします」

 マイクロCTC検査には、画像検査では難しい部位のがんも含め、さまざまながんを発見できるというメリットもある。現在、日本で行われているがん検査は、市区町村が負担する住民健診と、自己負担で行う人間ドックなどがある。しかし、住民健診では5大がんのみが検査の対象で、全身人間ドックの場合には時間がかかる上に、PETやCTでは胃や大腸のがんを調べることは難しい。

「がん検診で画像検査を受けた際に、何か異常があっても、それが良いものか悪いものなのか分かりません。その場合、組織を取り出すといった生検を行いますが、肺などは患者さんの負担も大きく、手軽に実施するのは難しい。そこで、CTC検査を組み合わせる方法をおすすめします。画像検査で異常がみられCTC検査も陽性なら、本当にがんであると疑う判断材料になります」

 すでに、CTC検査が進んでいる欧米では、がんの治療をして再発が心配な人に対し、再発を早期発見する目的でも使われているという。がんの治療前後での血中のがん細胞の数を見て、減っている人はがんが治りやすく、減っていなければ治療抵抗性があると考えられるため、次の治療法を考える判断材料にもなるそうだ。

 検査の価格は1回19万8000円。すでに全国約90カ所のクリニックでマイクロCTC検査の導入が決まっている。5月8日以降、全国の提携クリニックで順次検査が行われる予定だ。

 多くのがんは、より早期に発見すると治る確率が高くなるので、気になる人は検査を検討してみてはどうか。

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