Dr.中川 がんサバイバーの知恵

KANの告白で話題 「メッケル憩室がん」は転移なければ手術で治癒も

(KAN_offcialツイッター)

 患者さんによって出血、腸閉塞、憩室炎を起こすタイプに分かれます。出血は、一度に大量に出やすく、痛みなどもなく突然発症するのが特徴です。

 このメッケル憩室にできる腫瘍が、メッケル憩室がん。がんの中でも非常にまれで、1例の症例報告で論文になることがあるほどです。

 小腸は2メートルほどと長い上、胃からも大腸からも遠く、胃カメラや大腸カメラでは届きません。錠剤のように口から飲んで撮影するカプセル内視鏡が有効ですが、このがんは前述した通りかなりまれですから、積極的に勧められることはないでしょう。今回、見つかったのは幸運もあると思います。

 それでもへその周りの痛みが続いたら、受診をためらうのはよくありません。KANさんも、「腹痛が数週間継続した」ことが診断につながっていますから。

 肝心の治療は、腹膜などへの転移がなければ、手術が中心。がんがある部分を切除すれば治癒も十分可能です。小腸は長いので、20~30センチほど切除しても問題なく、胃がんなどの切除後に見られる体重の極端な減少もありません。

 KANさんは4月からの公演を中止して治療に専念するそうですが、手術後に体力が回復すればライブ活動を再開できると思います。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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