第一人者が教える 認知症のすべて

「認知機能の低下」とは具体的にどんな能力が低下するのか?

エピソードそのものを忘れてしまう(C)日刊ゲンダイ

 さて、アルツハイマーの記憶障害についてですが、一般的に、出来事記憶の障害が中心です。よくされる質問に「この物忘れは、認知症によるものか、それとも年を取ったせいか」があります。認知症による記憶障害の場合、その出来事を忘れてしまう。

 すなわち「この前の日曜日、映画を見に行った」という出来事を忘れてしまう。映画のタイトルや出てきた俳優の名前を思い出せない場合は、年を取ったり忙しすぎたりすれば、認知症でなくてもよくあることです。

 アルツハイマーの記憶障害で典型的なものとしては、「発症後に起きた新たなことを覚えられない『前向性健忘』から始まり、やがて、発症前のことを思い出せない『逆行性健忘』も生じる」「数分前の出来事を覚えていないが、かなり前(若い頃など)の記憶はある」「初期では自ら思い出せなくても、言われると思い出せる」も挙げられます。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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