健康指標の意味を知る

【HbA1c】過去1~2カ月の血糖値の平均を反映 前日の食事では変化しない

検診直前の努力は無駄
検診直前の努力は無駄

「空腹時血糖値」は知っていても、「HbA1c」を知らない人は多いと思います。これも糖尿病関連の項目です。

 血糖値は、職場健診に含めることが法律で義務付けられていますが、こちらは任意です。しかし大半の会社が、検査項目に入れているはずです。

「糖化ヘモグロビン」とも呼ばれています。ヘモグロビンは、赤血球の中に大量に含まれる、酸素運搬用のタンパク質です。これに血糖(血液中のブドウ糖)が結合したものが、糖化ヘモグロビンです。

 赤血球は骨髄で作られますが、このときすでに、その内部にヘモグロビンが格納されています。この段階では、まだヘモグロビンは糖化されていません。しかし赤血球が血管に出てくると、ヘモグロビンがブドウ糖にさらされて徐々に糖化が進みます。もちろん血糖値が高いほど、糖化のスピードも上がります。

 ただし赤血球の寿命は約3~4カ月。糖化ヘモグロビンもろとも脾臓で破壊され、新しい赤血球が骨髄から供給されてきます。そのため糖化ヘモグロビンも、赤血球の寿命と同じと考えられますが、医学的にはもっと短い「過去1~2カ月」の血糖値の平均を反映しているとされています。

 健診結果に出てくる数字は「全ヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの割合(パーセンテージ)」です。HbA1cが5.2であれば、全ヘモグロビンの5.2%が糖化していることになります。

 日本糖尿病学会のガイドラインでは、正常範囲は4.6~6.2となっています。ただし6.0~6.4だと「糖尿病の可能性が否定できない」とも書かれています。また6.5以上になると「糖尿病が強く疑われる」となります。

 なおHbA1cは、1日や2日の食事ではほとんど変化しないため、健診の前日に食事を節制してもムダな抵抗です。いい結果を得るためには、せめて1カ月前から頑張るべきでしょう。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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