手首や足首にできるしこり「ガングリオン」は放置しても大丈夫?

中の物質を抜いたら患部を圧迫
中の物質を抜いたら患部を圧迫

 20~50歳代の幅広い年齢層で発症しやすいといわれる「ガングリオン」。一度聞いたら忘れられない印象的な名前な、これに悩まされている人は少なくない。

■痛みはない、悪性腫瘍も見た目そっくり

 ガングリオンは主に手首の外側や内側、足首などにできるしこりのこと。ピンポン球大程度のぽっこりと盛り上がった見た目が特徴だ。痛みはないことが多いが、放置していてもいいのだろうか。東京・埼玉などで展開する「はなふさ皮膚科」の理事長、花房火月医師(皮膚科専門医)に話を聞いた。

「『初めて(ガングリオンが)できた』という人は、気づいた時点で皮膚科を受診していただきたいです。なぜなら、ガングリオンと見た目が似ているほかの病気が数多くあるからです」

 よく知られているものとしては、脂肪腫や粉瘤。悪性のものでは脂肪肉腫もある。悪性なら、当然ながら治療が遅れれば命にかかわる。

「悪性疾患を除外し、ガングリオンだと診断するためにも、皮膚科や形成外科、整形外科、スポーツ整形外科などで受診を。検査で、突出した部分に注射針を刺し、中が粘液であるということを確認します」

 ガングリオンは腫瘍ではない。ヒアルロン酸など関節の潤滑油の役割を担うゼラチン状の粘液物質が、関節包や腱鞘にたまったものだ。

 放置していても極端に大きくなることはない。関節包や腱鞘の変形で、良性の病変であるため、ガングリオンが悪性に転換するという報告もない。

■中身を抜いた後の圧迫が重要

 なぜガングリオンができるのか。その原因はわかっていないが、手首や足首を一般の人よりよく使う人、激しく動かす人はできやすいとみられている。

「たとえば、手首や足首をどこかにぶつけたり、酷使したりする。するとその部分に炎症が起きる。炎症が起きた箇所は変形が起こりやすい。変形したところに粘液がたまることでガングリオンができる。そう考えてもらえればわかりやすいかと。ただ、外的刺激や摩擦を受けやすい人にできやすいといっても、該当しない人もいます」

 自然としこりがなくなる場合もある一方で、いつまでも残っていることも。治療方法にはどんなものがあるのだろうか。

「注射で中にたまっている粘液を抜くのが、もっともメジャーな治療方法。ただ、『抜くだけで、終わり』とする医療機関が多いのですが、これではいったんは治まっても、結局、何度も繰り返しできてしまう人が多いです。注射の治療で重要なのは、中の物質を抜いた後にしっかりと患部を圧迫することにあります」

 中身を抜いた後は、患部の上にガーゼを枕状にして折って何枚か重ね、医療用テープで留めて圧迫する。少なくとも48時間はその圧迫状態を保つ。

「その後もできれば2週間ほど自宅でも圧迫を続けてほしい。当院ではガーゼや医療用テープをご購入いただき、家で患者さん自身が処置できるようにやり方を指導しています。注射後に時間をかけて圧迫をしっかり行うと、再発率はかなり下がります」

 圧迫中はなるべく患部に負荷をかけないことを意識する。日常生活は通常通り送れるが、激しい運動をしたり重い荷物を持ったりするなど、患部の酷使は避けた方がいい。

 ガングリオンそのものは、前述の通り痛みがない。しかし、ガングリオンが神経を圧迫し、痛みが出ることはある。見た目が気になったり、再発を繰り返すので注射以外で何とかしたいという患者もいる。

「その場合は外科手術を行うこともあります。難しいのは手首の内側にガングリオンがある場合。手首の内側は神経が密集しているエリアなので、決して簡単な手術ではありません。手の専門の外科医が行うべき手術になります」

 手や足の指のガングリオンであれば、皮膚科で外科手術を行うことも可能だそうだ。

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