この緩和ケア病棟に、ナースはきっと20人はいると思う。緩和の看護を志望した人が多いのだろう。みな感じがいいし、優しい。それでも、こちらにも好き嫌いがある。マスクで顔は分かり難いが、声、仕草、すぐ好きになった人もいる。「不器用だ」と思っても、「いい人だ」と思える人もいる。好きじゃなくても「ちゃんとしている」人もいる。
医者には嫌われたくないと思うが、ところがナースに対してはそうは思わない。嫌なナースがいて、その人は夜勤だけなのだと思うが、2回、夜にあった。足音から、その人が来ると分かる。ナースシューズのかかとを潰して、スリッパのようにして履いている。ふつうの声かけなのだが、親身じゃないって、わかる。ベッドに「ガンッ」とぶつかる。痛む足をギューって持つ。それで「パット取り替えましょうか」と言われても、「今はいいです」と答える。でもそんなことも、私はもうすぐ言えなくなるだろう。
がんと向き合い生きていく