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「4」が気になる…末期がんで緩和病棟に入った男性の心境

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 この緩和ケア病棟に、ナースはきっと20人はいると思う。緩和の看護を志望した人が多いのだろう。みな感じがいいし、優しい。それでも、こちらにも好き嫌いがある。マスクで顔は分かり難いが、声、仕草、すぐ好きになった人もいる。「不器用だ」と思っても、「いい人だ」と思える人もいる。好きじゃなくても「ちゃんとしている」人もいる。

 医者には嫌われたくないと思うが、ところがナースに対してはそうは思わない。嫌なナースがいて、その人は夜勤だけなのだと思うが、2回、夜にあった。足音から、その人が来ると分かる。ナースシューズのかかとを潰して、スリッパのようにして履いている。ふつうの声かけなのだが、親身じゃないって、わかる。ベッドに「ガンッ」とぶつかる。痛む足をギューって持つ。それで「パット取り替えましょうか」と言われても、「今はいいです」と答える。でもそんなことも、私はもうすぐ言えなくなるだろう。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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