がんと向き合い生きていく

「4」が気になる…末期がんで緩和病棟に入った男性の心境

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 自分が死ぬ時は4時なのか、そんなことどうでもよいことなのだが、数字の時計が良くない。ふと見ると、いつも4時だったり、44分だったり、そんなに私に4が纏わりつかないで欲しい。枕元の時計は、数字ではなく長針短針にすればよかったか。暇だから、こんなことばかり考えている。なにか、もっと良いことを思いつけばいいのに……。

 私のような末期がん患者が、いつ死んだって、この世の中、なにひとつ変わらないのだ。たとえ、悲しんでくれる人がいても、すぐに忘れられる。

 コロナウイルスが収まり、地球温暖化防止にめどが立って……せめて、ウクライナの戦争が終わってから死にたかった。でも、私はまだ死んでいない。また、今日のネット記事に「がん治療・新薬」とある。私には間に合わないけど、そこに眼が行く。生きたがっている私がいる。

 明日は明日の風が吹く、今晩は嫌いなナースではない。眠剤をもらって、このまま眠れそうだ。

  ◇ ◇ ◇ ◇ 

 患者の心は複雑なのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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