前回に続き、慢性腎臓病(CKD)の食事療法についてもう少しお話ししたいと思います。
腎臓病の食事療法の3本柱は「塩分」「野菜・果物」「タンパク質」。中でも最も大切なのは塩分を減らすことで、「血圧を下げる」「薬がききやすくなる」「腎臓の障害を抑える」という効果が期待できます。
「塩分」摂取の目安は、1日6グラム以下。日本人の平均塩分摂取量の約半分と考えればいいでしょう。
塩分摂取量の減少は、慢性腎臓病の患者さんがもっとも苦労されているところです。無理なく続けられるポイントとして、「ダシや香辛料を多用する」「料理の具材を増やす」といった具体的な方法を、患者さんに伝えています。
次に「野菜・果物」の調整。腎機能が低下すると、腎臓からのカリウム(ミネラルの一種)の排泄が少なくなり、体にたまってしまう。「高カリウム血症」と呼ばれる状態です。野菜(いも類、かぼちゃ、白菜など)と果物(バナナやメロン、キウイなど)にはこのカリウムが多く含まれるため、腎臓病の患者さんには摂取を控えるよう指導されてきました。
ただ、ここ数年、この制限は慢性腎臓病の患者さんすべてに当てはめる必要はないのではないかという考えも出ています。たとえば、慢性腎臓病の患者さんは便秘に悩む人が多い。これは、野菜と果物を調整したことで食物繊維が不足しているからではないかとみられています。
慢性腎臓病の患者さんは、本来尿で排出されるはずの毒素が体内にたまりやすい。排便で排出したいところですが、食物繊維不足で便秘になると毒素は体内で滞ってしまう一方になる。当院ではすべての患者さんに一律に野菜・果物制限をするのではなく、状況や採血結果に応じ、特にカリウムが多く含まれる野菜・果物から順々に制限するという方針をとっています。
最後に「タンパク質」の制限について。タンパク質は筋肉などをつくるのに欠かせない材料ですが、多く摂取すると尿毒素などの不要な老廃物が体内に増えてしまいます。腎機能のステージによっては、これらの老廃物が体内にたまっていきやすくなる。
そこでタンパク質制限が指導されることになるのです。ここで覚えていただきたいのは「自己流でのタンパク質制限は非常に危険」だということ。タンパク質を制限した分、他の栄養素でカロリーを補うなどの工夫が必要なためです。必ず栄養士など専門家の指導のもとに行いましょう。
なお、慢性腎臓病の患者さんの食事療法の考え方とレシピを1冊にまとめた「腎臓病とわかったら最初に読む食事の本」(家の光協会)を出版しています。こちらではさらに詳しく、かつわかりやすく食事療法について説明しています。
健康長寿のカギは腎臓にあり