昔は「医師薬」という言葉があったように、薬学部は医学部、歯学部と並ぶ受験の難関学部とされていました。その理由は、薬学部の少なさにありました。政府が1983年から2002年まで、薬学部の新設を凍結していたからです。そのため全国に薬学部は46学部しかなく、入学定員は約8000人に絞られていました。しかし2003年から規制が緩和され、また6年制への移行などもあって、現在は79学部、入学定員1万3205人(6年制に限れば1万1787人)に達しています。私学は50学部で、6年制の定員は10576人です。
薬学部を評価する上で最も重視されているのが、薬剤師国家試験(国試)の合格率です。とくに私立の薬学部は、入学者の大半が薬剤師を目指しています。国試を通らなくても、必要な単位を取得していれば、「薬学士」として卒業できますが、薬剤師の仕事に就くことはできません。
ただし国試合格率だけでは、実態は分かりません。仮に100人が卒業しても、そのうちの30人しか国試を受けなかったとしましょう。しかし合格人数が27人だったとすれば、国試合格率は90%という、全国トップレベルの数字になります。
実際、多くの私立の薬学部では、模試などの成績が悪く本番の合格が見込めない学生に対して、受験を断念するよう指導していると言われています。そうやって国試の合格率を少しでも高く見せようというわけです。
薬剤師国家試験合格率とストレート卒業率…国家資格合格率データを読む(1)
むしろ注目すべきは「卒業率」、つまり入学者数に対する、ストレート(6年間)で卒業できる人数の割合です。私立薬学部の授業料は、年間200万円と言われています。6年間で1200万円にもなります。留年せずに、ストレートで卒業できれば、それに越したことはありません。
卒業率が分かれば、国試の現役合格率(留年せずに卒業できて、しかも国試を合格した人の割合)が分かります。それが高いほど優秀な大学、投資に見合う大学と言えるでしょう。
今年の国試に関しては、大学別の合格率が発表されていますが、卒業率などはまだ出てきていません。しかし昨年度(2021年度)の数字(薬学部における修学状況等 2022年⦅令和4年⦆度調査結果)が公開されているので、それで見ていくことにしましょう。
卒業率で最も高かったのは北里大学(90.8%)でした。2016年度に250人が入学し、2021年度には227人が卒業しました。現役合格率が最も高かったのは明治薬科大学でした。入学者313人に対して、268人が現役合格しています。
一方で卒業率が50%未満が11学部、国試の現役合格率が50%未満が20学部もあり、上位と下位の格差は相当なものです。なお国際医療福祉大学福岡薬学部は、2021年度にはまだ卒業生を輩出していません。
表1に、卒業率ベスト10を、表2に現役合格率ベスト10をまとめました。これらを見ると、昔からの名門校が、卒業率・現役合格率ともに高いことが分かります。慶應の薬学部は、もとは共立薬科大学でした。これから子供を薬学部に入れたい人は、こうした数字を参考にされるといいでしょう。