医療だけでは幸せになれない

コロナはまだ未知なもの…いまは判断、行動にとらわれず、自由に思考すべき

反対意見も考え続ける(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 だから、自分自身も訳のわからないものが書きたい。とはいえ、訳がわからないものは、繰り返しどころか1回も読めないというのが普通だろう。わからなくて1回も読めないものと、わからないけど繰り返し読みたいものの差は何か。好き嫌いということだろうか。わかるものにだけでなく、わからないものに対しても好き嫌いがある。わからないけど繰り返し読みたいものを求めてというのは、わからないけど好きというものを探しているのかもしれない。

 しかし世の中のありようは、わかるものは好きだけど、わからないものは嫌い、そうしたものが主流に思える。自分が理解できるもの、自分と同じものには好意的だが、理解できないもの、自分と異なるものは排除しがちな世の中と言ってもいい。コロナに関わる論争も、似たようなところがある。この背景のひとつは、行動につながらない思考は無意味という価値観が関係しているような気がする。理解せずに行動する、自分の意見と異なる行動をするというのはむつかしい。多くの行動について当てはまることだ。コロナに対する対応も例外ではない。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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