医療だけでは幸せになれない

コロナはまだ未知なもの…いまは判断、行動にとらわれず、自由に思考すべき

反対意見も考え続ける(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

■反対意見も考え続ける

 具体的に書こう。

 コロナは風邪だと理解して、その理解が自分の意見になり、それに沿った行動をとる、そういうことだ。普通といえば普通。普通過ぎるといってもいい。風邪だと理解しながら、重症化する危険な病気として対処するというほうがおかしい。

 しかし、それこそが思考停止の原因ではないだろうか。思考を行動につなげない。行動にとらわれず思考しなければ思考の自由が担保できない。思考を止めないために、行動は適当にする。行動につながらない自由な思考こそ重要である。そういうのはどうか。

 コロナについて考えるとき、理解しがたいものについて、自分の行動とは真逆なものについて、よくよく考えてみる。いったんマスクを着ける/着けないと判断したうえで、着けたのであれば、着けていない場合のことをよく考える。着けていないのであれば、着けたときのことを考える。具体的に言えばそういうことである。マスクを着けると、着けたほうがいいという情報ばかりを集めやすいし、考え自体もその方向に振れがちだ。マスクを着けないとその逆である。それは思考停止に他ならない。

3 / 4 ページ

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

関連記事