国家資格合格率データを読む(2)医師国家試験合格率と医学部現役卒業

2022年度 医師国家試験 新卒合格率(留年生を含めた合格率)
2022年度 医師国家試験 新卒合格率(留年生を含めた合格率)

 医学部は受験の最高峰。全国に82学部があり、内訳は国立43校(防衛医科大学校を含む)、公立8校、私立31校となっています。ただし私立の国際医療福祉大学は、まだ卒業生を輩出していません。

 今年(2022年度)の医師国家試験(国試)合格率は91.6%で、去年(91.7%)とほとんど同じでした。とくに新卒合格率は94.9%。しかも国・公・私立の別なく、多くの大学が95%以上でした。上位は自治医科大学が100%、筑波大学が99.3%などとなっています。気になる東京大学は93.2%、京都大学は94.5%で、偏差値と国試の新卒合格率は、必ずしも相関していないようです。

 「新卒」という言葉ですが、文科省のデータでは、留年生も含んだ数字になっています。ただし留年生の人数は公開されていません。また卒業して国試浪人をしている人は「既卒受験者」としてカウントされます。合格率は、新卒よりも低い傾向にありますが、既卒は全受験者の1割に過ぎません。

 では6年間で卒業できる割合は、どれくらいなのでしょうか。2021年度のデータ(医学部における国家試験等の状況⦅令和3年度⦆:文部科学省)が公開されているので、見てみましょう。それによると、国立大学は85.8%、公立大学は83.5%、私立大学は84.4%で、ほとんど同じです。ただし大学によって大きな開きがあります。

 国立大学では名古屋大(95.6%)、神戸大(94.9%)、鹿児島大(94.9%)など90%以上の大学が多い反面、徳島大(73.7%)、群馬大(76.4%)、宮崎大(76.4%)の3校は80%を切っていました。群馬大では、アカハラで多数の留年が出たといったニュースが流れているので、そうしたことが影響しているのかもしれません。

 公立大学では、名古屋市立大学(90.7%)が最高。しかし80%に届かない大学が3校ありました。横浜市立大(73.3%)、和歌山県立医大(78.8%)、奈良県立医大(79.8%)です。

2022年度 医師国家試験 新卒合格率(留年生を含めた合格率)
2022年度 医師国家試験 新卒合格率(留年生を含めた合格率)
認定制度を使っての国家試験受験合格率は44.8%

 また私立では、川崎医科大学(64.5%)、杏林大学(67.5%)、福岡大学(68.2%)などが目立って低くなっています。これらの大学は、多くの留年生を抱えているはずです。

 あまり知られていませんが、海外の医学部を卒業した日本人のために、「医師国家試験受験資格認定制度」が用意されています。まず書類審査があり、次に日本語による診療能力の調査が行われます。海外の大学では、授業は当然その国の言葉(ないしは英語)で行われますが、日本で働くからには、日本語の医学用語が使えないとまずいからでしょう。それらをパスすると、国試受験資格が得られます。

 書類審査を経て「医師国家試験予備試験」を受ける人も、少数ながらいます。ただし合格しても、すぐに国試を受けられるわけではありません。日本国内で1年以上の実地修練が課せられます。そしてようやく国試受験資格が得られるのです。

 認定制度を使って国試を受験する人は、毎年150~200人ほどいます。今年は160人が受け、合格率は44.8%でした。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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