高齢者の正しいクスリとの付き合い方

ステロイドにさまざまな数多くの副作用があるのはどうしてなのか

女性だけでなく男性も副作用の「骨粗しょう症」に…(写真はイメージ)
女性だけでなく男性も副作用の「骨粗しょう症」に…(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 これまでお話ししてきたように、ステロイドにはたくさんの効果があります。それは言い換えると、たくさんの副作用のリスクがあるということにもなります。今回はステロイドが持つ副作用を、効果と関連付けながらできるだけわかりやすくお話しします。

 前々回、「ステロイドは元気を出す」とお伝えしましたが、その理由のひとつは血糖値を高める効果によります。そのため、ステロイドの内服が長期間になると、その副作用として「糖尿病」を発症する場合があるのです。ステロイドを中止できればいいのでしょうが、ステロイドを用いる病気の特性上、それが難しいケースも多くあります。場合によっては、糖尿病のクスリを使わなければならないこともあります。この副作用は内服や注射などでステロイドが全身に作用していることにより起こります。ですから、外用(塗り薬や吸入薬)として局所的に使用している場合は起こりにくいといえます。

 ステロイドの影響で血糖値が高くなると、体はそれを下げようとしてインスリンを分泌します。じつはインスリンの作用は血糖値を下げるだけではありません。体の脂肪を増やす作用もあります。脂肪は顔や腹部に多く存在しているため、ステロイドを長期間、そして多量に用いているとそういった部分の脂肪が増え、肥満や満月様顔貌という副作用が起こります。これらの副作用は直接生命の危機に陥るものではありませんが、外見上の変化を伴います。対策としては、ステロイドの減量・中止が挙げられますが、それができない場合には食事を工夫するなどしてカロリーをコントロールしなければなりません。

 ステロイドは体のさまざまな部分に作用します。骨も例外ではなく、骨形成(骨を作ること)を低下させ、骨吸収(骨が分解されること)を増加させ、その結果、副作用として「骨粗しょう症」が起こることがあります。特に閉経後の高齢女性でリスクが高いのですが、ステロイドの使用が長期間になると男性でも起こることがあります。そのため、必要に応じて骨粗しょう症のクスリが併用されます。

 また前回は「ステロイドに免疫抑制作用がある」ことをお伝えしました。本来、免疫は体を細菌などから防御するための重要なものです。そのため、ステロイドを使用していると感染しやすくなる場合があります。また、感染したときに治りにくくなるケースもあるため、いかに感染をしないようにするかが重要となります。こまめにうがいや手洗いをして、感染予防に努めましょう。

 ほかにも「胃潰瘍」などたくさんの副作用がありますが、ステロイドの副作用対策の基本は減量・中止となります。しかし、減量・中止にもリスクがあるのです。次回、詳しくお話しします。

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

関連記事