これらの妄想に対して、非薬物療法として十分なエビデンスのある治療は現時点では存在しません。妄想が生じるのは、脳神経の障害が根本的原因なので、理屈を述べて「そうではない」と周囲が言っても、認知症の方がそれを受け入れることは困難です。
まず行うべきは、本人の訴えを傾聴すること。頭ごなしの否定は絶対に避けるべきです。
認知症の妄想は、自分の能力が低下してしまったことへの不安や喪失感、劣等感、孤独感からきているともいわれています。たとえば「妻がほかの男と浮気をしている!」と思い込む被害妄想では、認知症患者とそうでない伴侶(この場合は妻)の健康状態格差が影響しているとも指摘されているのです。
受容的・共感的態度で接し、安心感を与えることが非常に大事。「認知症だから何もできない」とするのではなく、役割を与え、生きがいを持ってもらうことも重要です。
第一人者が教える 認知症のすべて