医療だけでは幸せになれない

マスク着用に関する「個別」の考えと「一般的」な考え

個人的な判断でマスクをしている…(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 先日、医者を対象とした臨床研究コースの研究発表会に参加したときのことである。複数の発表者が、「個人的な疑問としては」という言葉を枕にして自身の発表をしたのだが、そのあとに続く発表内容が、個人的どころか、どちらかというと一般的で、みんな同じように誰でも言いそうな内容であったことが印象に残った。

 なぜそこが印象に残ったかといえば、コロナの流行についていろいろ考えていたことがおそらく影響している。

 この状況は「個人個人が判断しているにもかかわらずみんながマスクをしていること」と重なっている、そう思えたからだ。

 大多数の人が屋外でもマスクを着けている現状に対して、同調圧力の結果、みんながしているから私もするという日本の特徴が表れているという解釈がある。しかしここには、同調圧力とはまた違った、個別の判断と一般的な判断のつながりがある。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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