がんと向き合い生きていく

がんで亡くなった先輩の思い出…内視鏡検査が抜群に上手だった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私が大学の医学部を卒業して、半年後に赴任した病院にS先輩がいました。その病院の内科は主に消化器のグループでスタッフは7人、結核などの感染症以外の患者を受け入れていました。S先輩は上から4番目、私はいちばん下の7番目です。このグループは2つの病棟を受け持っていました。

 S先輩が内視鏡検査を行う時には、私は一緒に検査に入り、内視鏡検査の方法や生検方法などを指導していただきました。内視鏡検査で使うファイバースコープは、今よりもずっと可動が悪かったと思うのですが、S先輩はスコープの反転などがとても上手で、患者に苦痛なく検査されていました。

 S先輩には1年半にわたってご指導をいただきました。胃内視鏡検査で早期がんを見つけた時、大腸二重造影法のX線写真で褒めていただいた時……忘れられない思い出です。

 時間外でもS先輩はいろいろな話をしてくださいました。学生時代に結核を患われたようで、1年遅れて卒業されたのですが、「その分、2学年の同級生を持った」とお話しされていました。たしかにS先輩には利になっていたように思います。また、結核で入院中にこっそり病室の窓から抜け出て、また窓から戻ったような思い出話も何度か聞きました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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