老親・家族 在宅での看取り方

患者や家族はどういったことを希望されているか、何に不安を感じているか

患者さんやご家族とは積極的にコミュケーションを取る

 在宅医療について、どのようなサービスを受けられるのかを知り尽くしている方は非常にまれ。希望して始められた方でもそうなのですから、なんとなく流れで在宅医療に……という方ではなおさらです。

 ですから私たちは、患者さんやご家族と積極的にコミュニケーションを取り、どういったことを希望されているのか、どんなことに不安を感じているのか、確認するようにしています。コミュニケーションの内容は、療養や実務に関することにとどまりません。

 息子さん夫婦と住んでいる90歳の男性。慢性腎臓病、腎性貧血、腹部大動脈瘤、前立腺肥大症、痛風と、複数の病気を抱えていました。これまで通院で治療を受けていましたが、転倒し杖を使うようになったため、在宅医療に切り替えたとのこと。

 ただ、急に在宅医療にしたので、主治医が気を悪くしていないか心配されていました。また、5年前に奥さまが風呂場で急死し、警察の検視が大変だったとか……。自分が自宅で最期を迎えた時、その大変さを息子さんたちにまた味わわせるのはしのびないとも話されました。私たちは納得いくまでお話しし、不安を取り除くことに努めました(なお、自宅で亡くなられても、医師が24時間以内に診察していれば、再度診察しなくても死亡診断書は交付できますし、24時間以上経っていても、医師が再度診断をし、かかっていた病気で死亡したと診断できれば、診断書は書けます。つまり、警察の検視はありません)。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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