それに対して、「血圧が高い人は正常の人に比べて、脳卒中や心筋梗塞のリスクが2倍以上高い」との説明もできる。むろん、血圧が正常でも脳卒中や心筋梗塞になる人はいるし、高血圧でならない人もいる。集団として比べると血圧正常の集団で1%脳卒中が起きるときに、高血圧の集団では2%以上起きるということである。ただ、この説明は個別の患者にはわかりにくい面がある。目の前にいるその個人は、高血圧だとしても脳卒中や心筋梗塞にならないかもしれないし、正常血圧だとしても合併症を起こすかもしれない。これを疫学的説明と呼ぶ。高血圧で脳卒中や心筋梗塞を起こした人に対しては、病態生理学的説明の方が腑に落ちやすいだろう。疫学的説明をしても、「高血圧でない人がいるのになぜ私はこんなことになったのだ」という疑問を抱くのが普通かもしれない。その反対に高血圧を放置しても元気な人に対して、前者の病態生理学的説明は理解しがたい。
医療だけでは幸せになれない