医者も知らない医学の新常識

「テロメア」は長くても危険!? 海外の一流医学誌が掲載

写真はイメージ

 遺伝子が折り畳まれた染色体を、両端で保護するような構造のことを「テロメア」と呼んでいます。細胞は分裂すると同じ細胞になりますが、テロメアと呼ばれる部分だけは、分裂ごとに短くなることが知られています。つまり、細胞が年齢を重ねるごとにテロメアは短くなります。そして、テロメアがなくなると、もうその細胞は分裂できなくなるのです。これが細胞の寿命です。テロメアが短いことは、それだけその細胞が老化している、という意味でもあるのです。

 テロメアの長さには個人差があり、それが短いと、慢性の内臓の病気や血液の病気になりやすいことが知られています。こうした情報からは、テロメアが長いほど健康で長生きになるように思われます。それは本当でしょうか?

 今年の「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という一流の医学誌に、意外な研究結果が報告されました。先天的にテロメアが長くなる遺伝子の変異があり、そうした変異を持つ人を調べたところ、クローン性造血という、老化に伴って起こることの多い血液細胞の異常が高率に見つかったのです。この異常があると、血液のがんなどのリスクが増加することが知られていて、実際にテロメアの長い変異のある人で、そうしたがんが多く発生していました。

 テロメアが長いことも、決して良いことばかりではないようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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