コレステロールには「HDL(善玉)」と「LDL(悪玉)」の2種類があると思ってる人が、大勢います。もちろんそれでいいのです。悪玉コレステロールは低いほうがよい、善玉コレステロールは高いほうがよい。それさえ押さえておけば問題ありません。しかし、せっかくなので、もう少し詳しい話をしてみましょう。
実はコレステロールという物質は化学的には1種類、HDLやLDLといった区別はありません。善玉も悪玉も、すべて同じコレステロールなのです。
前回、中性脂肪はタンパク質などと結合してリポプロテイン(LP)と呼ばれる粒子を形成しているという話をしました。この粒子は複雑な構造をしています。中性脂肪などの塊を核とし、その周りをリン脂質(細胞膜などの主要材料)とコレステロールの層が囲い、さらに外側をアポリポプロテインというタンパク質が覆うという、3層構造をしています。
LP粒子の比重は、コレステロールの含有量によって異なっています。含有量が少ないと高比重、多いと低比重になります。
そして高比重のものをHDL(High Density Lipoprotein)、低比重のものをLDL(Low Density Lipoprotein)と呼んでいます。
LDLの比重は水の約1.02~1.06倍、HDLは約1.06~1.20倍で、遠心分離機によって分けることができます。そしてLDL粒子に含まれているコレステロールをLDLコレステロール、HDL粒子に含まれるものをHDLコレステロールと呼んでいる、ということなのです。
ちなみにコレステロールはリン脂質とともに、細胞膜の材料として使われます。また各種ホルモンやビタミンDの原料になったり、脂肪の消化吸収を助ける胆汁酸に使われたりしており、人体になくてはならない物質です。しかし、HDLとLDLの量やバランスが崩れると、健康上の問題が生じてきます。
永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。