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肩の痛みが続く「上腕二頭筋腱損傷」の診断は非常に困難

(森大祐先生提供)
(森大祐先生提供)

「肩の痛みがずっと続いています。レントゲンやMRIでは異常がないと言われました」

 こんな訴えで患者さんが来院された場合、可能性がある病気の一つに、上腕二頭筋腱損傷があります。

 上腕二頭筋腱は、肩の腱の一部。肩関節内の腱の一部の上腕二頭筋腱が損傷することで、肩の痛みが生じることがあります。

 きっかけは、「転んで手をついた」「肩を激しくぶつけた」「車の運転席から後部座席の荷物を取るために後ろに手を伸ばした」など。

 しかし患者さんの訴えからこの病気の発見にまで至るのは、非常に難しい。画像検査で上腕二頭筋腱の損傷が判別しにくいからです。個人的には、早期発見が非常に難しいといわれる膵臓がんに匹敵するのではないかと思っています。

 イラストを見てください。肩のつけ根の前に上腕二頭筋腱はあり、腱の長さは約7センチと人体の腱の中ではかなり長い。

 そしてこの腱は上腕骨頭の中を急峻な角度で関節の中に入ります。肩をずっと動かしていると、結節間溝という溝で骨との摩擦が生じ、やがて腱はすり減っていきます。次第に痛み物質が分泌され、熱(炎症)が生じます。何らかのきっかけで炎症がひどくなり、強い痛みが出てくる。炎症が続くことで頑固な肩の痛みは引かなくなってしまいます。

 この病気を疑う患者さんの訴えにはどういうものがあるか。どう治療するといいのか。次週以降お話しします。

森大祐

森大祐

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

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