がんと向き合い生きていく

入院していれば家族に会えないまま亡くなっていたかもしれない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 亡くなる直前の2日ほどはほとんど何も口にしなくなりましたが、むせる心配もあって、水で唇を濡らす程度にとどめたそうです。

 昨日の夕方に亡くなったばかりなら、今はきっとお葬式などいろいろな準備で大変だろうと思いましたが、電話での奥さんの声はとても元気そうでした。

 しかし、おそらくお葬式などが終わって1週間くらいたった後、それから寂しさが湧いてくるのではないか。そのように感じました。

 私はご主人を自宅で看取った奥さんにこう声をかけました。

「ご苦労さまでした。きっと奥さんにたくさん感謝していたと思います。このコロナで、入院していれば家族に会えないで、会えたとしても短時間だったかもしれません。奥さんは大変だったと思いますが、苦しそうでなかったなら、本人にとっては自宅で良かったと思います」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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