アフターコロナで目立つ麻疹・結核・インフルエンザ…どう考えればいいのか

観光客も戻ってきた
観光客も戻ってきた(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナの感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行して2週間ほどが経過した。この間、街は人出が戻り観光地や歓楽街も賑わいを取り戻したが、このところ目につくのが結核、麻疹、インフルエンザといった感染症のニュース。いずれも予防が難しい病気だが、本当にこれらの病気は増えているのだろうか。また、その対策はどうすればいいのか。公衆衛生に詳しい岩室紳也医師に聞いた。

 5月12日には東京都内で3年ぶりに麻疹感染者が出たことを都が発表した。4月14日にインドから帰国した茨城県の男性が4月27日に麻疹に感染していたことが確認。その後の調べでこの男性と同じ新幹線の車両に乗り合わせていた、東京都の男女2人の感染も確認されたという。また、神戸でも感染者が確認されている。

 5月17日には岩手県内では5年ぶりとなる結核の集団発生が確認されたことを盛岡市保健所が発表した。去年6月から今年4月までに18人が感染した。去年6月に盛岡市の学校に通う20代の女子学生が結核と診断され、家族や学校関係者81人を検査したところ16人の感染が確認され、1人が発症したという。

 東京都調布市の小学校では5月18日に児童・職員104人がインフルエンザの集団感染により学校閉鎖となった。ほかに、宮崎県内の高校では生徒・職員491人が、大分県の高校では生徒497人がインフルエンザに集団感染している。

「結核や麻疹は常に警戒すべきですが、特別多くなっているという印象はありません。新型コロナ前のペースに戻った、というべきで今はとりたてて騒ぐ必要はないのでは、と考えます。結核については徐々に患者数が減り昨年は低蔓延国になったばかりですが、海外からの渡航者が増えれば、ある程度感染者が増えるのは仕方ありません。麻疹についても日本は2015年から現在に至るまで“麻疹排除状態”と認定されており、日本に土着したウイルスにより流行が起きているというより、海外から持ち込まれたウイルスによって発症していると考えられています。いまの段階で例年に比べて速いペースで患者数が増えているわけではありません」

 実際、国立感染症研究所が発表する感染症発生動向調査週報(IDWR)23年第18週(5月1~17日)は、結核の新規報告数が121件・累計4316件、麻疹は新規0件・累計4件。一方、新型コロナ前の19年の同週(結核の新規86件・累計6752件、麻疹の新規11件・累計467件)や、18年の同週(結核の新規154件・累計6863件、麻疹の新規16件・累計125件)と比べて、少ない。

「むしろ、気になるのはインフルエンザです」

 IDWR23年第18週のインフルエンザは8316件で定点当たりの患者数は1.7人。これは19年(4703人、1.02人)や18年(3009件、0.61人)に比べて多い。

「本来なら冬場の集団感染の結果、集団免疫を獲得して収束に向かう季節にもかかわらず、明らかに増加傾向にあります。宮崎や大分のケースでは体育祭関連行事での交流が感染拡大の原因とされています。これはインフルエンザの抗体価が例年に比べて低いからでしょう。若い人だからこそ軽症で済んでいますが、糖尿病などの持病がある中高年齢者は重症化する可能性もあります」

■空気が滞留する場所に滞在しない

 では、これらの病気予防対策はどうしたらいいのか? 一般的には結核の対策は普段から十分な睡眠、バランスのとれた食事、適度な運動で抵抗力をつけることが重要だとされる。感染力が強く手洗いやマスクのみでの予防はできない麻疹は唯一、麻疹ワクチンが有効だといわれている。インフルエンザについてもマスクや手洗いに加えワクチンが強調されている。

「むろん、これらは大切ですが、新型コロナがそうであったように日本ではもっと空気対策をする必要があると思います。同じ車両に乗っていても感染する人としない人がいるのが良いヒントだと思います。ウイルスをなくせない以上、感染するほどの量を吸い込まないことが大切であり、それには空気の流れをつくりウイルスを拡散させることが重要です。ウイルスを含んだ空気が滞留する場所や出口、吸い込み口にあたる場所に長時間いないように努める。それが一般の人ができることではないか、と思います」

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