高齢者の正しいクスリとの付き合い方

ACE阻害薬は血圧を下げるだけでなく臓器を保護する作用もある

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 ACE阻害薬はその名の通り、ACEの働きを止めてアンジオテンシンIがアンジオテンシンⅡにならないようにすることで、血圧を下げるクスリです。血圧を下げるだけでなく、心臓や腎臓を保護する作用もあるので、多くのメリットがあるクスリでもあります。

 特徴的な副作用として「空咳(痰が絡まない咳)」があります。実はACEの作用で作られるのはアンジオテンシンⅡだけではなく、ブラジキニンという物質も作られます。これが空咳の原因といわれていますが、結局はACEの作用をしっかり止めることができている証拠でもあります。

 だからといって、咳により睡眠が妨げられるような状況は好ましくありません。このクスリを使っていて咳で日常生活に支障がある場合には、他のクスリへの変更を考えてもよいかもしれません。

 もうひとつ、血液中のカリウムが増えるという副作用があります。カリウムが増えすぎると心臓に悪影響が出る可能性もあるため、定期的に血液検査をしておいたほうがよいでしょう。

 ACE阻害薬は血圧を下げるだけでなく、他の臓器保護作用も持っており、さらにはアルドステロンの作用を抑えることで尿への塩分(ナトリウム)の排泄も促進してくれます。もちろん副作用はありますが、とてもメリットの多いクスリだといえます。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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