第一人者が教える 認知症のすべて

「財布を盗まれた」と大騒ぎ…それがきっかけで認知症が発覚

夫婦2人でいたのに、ある日突然、独りになってしまったら…(C)日刊ゲンダイ

「認知症の母親が、通販でいろいろ注文をして困ります」と言うのは、40代後半のある男性。

 お母さん(70代)は静岡県に1人で住んでおり、男性は東京都在住。認知症が発覚したきっかけは数カ月前。お母さんが「近所の人に財布を盗まれた」と大騒ぎし、警察を呼んでの騒動になったことでした。

 財布は盗まれておらず、冷蔵庫から出てきました。以前から家族ぐるみで親しくしていた近所のAさんからの連絡で、実家に急いで帰った男性。AさんやAさんの息子さんから、「あなたのお母さん、最近様子がおかしい。病院で診てもらった方がいいかもしれない」と言われました。

「◎◎◎を盗られた」という訴えはしばらく前からちょくちょくあり、Aさんが一緒にモノ捜しをしたこともあった、と。「盗られた」と訴えるモノはたいてい家の中で見つかり、しかしAさんが「置いた場所を忘れてただけじゃない?」と言っても、「絶対に違う」と主張する。その様子が、Aさんいわく「すごく険しい表情で、人が変わったよう……」。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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