第一人者が教える 認知症のすべて

認知症患者の「夜、寝ない」問題…介護する家族にアドバイスしていること

夜中になかなか寝てくれないのは…
夜中に寝てくれず、起こされる家族は寝不足

「お義父さんが夜寝てくれない。夜中に何度も『おーい、だれかいないかー』と家族を呼ぶのです。寝不足でつらい」

 これは、あるお嫁さんの訴えです。

 お義父さんがアルツハイマー病と診断されたのが1年ほど前。夫や高校生の息子も介護に参加しており、お嫁さんのワンオペではないのですが、夫も息子も会社、学校がある。夜中に起き出してくるお義父さんに対応できるのは、専業主婦である自分だけ、とのこと。

 認知症患者さんには、睡眠障害がよく見られます。以前もこの欄で触れましたね。加齢で浅い眠り(レム睡眠)の割合が増え、中途覚醒が多くなりますし、活動量が低下して昼寝の時間が増え、夜の睡眠の質が悪くなる。高齢者には、睡眠障害をもたらす病気のリスクも高くなります。理由はさまざま挙げられます。

 質の良い睡眠を取ることはいろんな意味で重要です。十分な睡眠は、脳と体の疲れを取り、免疫力維持に役立ちます。あまり眠れていないと、イライラしたり興奮したりと、メンタル面で不調が生じます。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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