あなたの「免疫力」が数値でわかる 客観的なチェック方法が登場

<実年齢より上か下か>

「免疫力アップ」などとよく耳にするが、そもそも自分の免疫力は高いのか低いのか、客観的に知っている人はどれだけいるのか――。そう思っていたら、簡単な血液検査で免疫力をチェックすることができると聞いて驚いた。開発者の東京医科歯科大学・廣川勝いく立名誉教授(「健康ライフサイエンス」代表)に話を聞いた。

「定量的免疫力測定評価法という検査です。2C.C.程度の血液を採取し、複数の免疫に関わる細胞の数や活性度を調べ、どれくらいの免疫力を持っているかを判定します」

 調べる細胞はT細胞とその仲間の細胞、NK細胞、B細胞など。細胞の数、比率、機能などを調べることで、(1)免疫力全体の能力(2)免疫反応で重要な働きをするT細胞の増殖能力(3)各細胞間のバランス(4)新しい病原体に素早く対応するか(5)以前感染した病原体にも対応できるか(6)病原体を駆除する抗体をつくるB細胞の働き(7)がん細胞やウイルスに感染した細胞を殺す能力――が分かる。

「免疫力を知るには、複数の細胞の総合的な力を調べなくてはなりません。その方法はこれまでありませんでした。そこで、多数の健常人の血中の免疫細胞の数、比率、増殖能力などをデータベース化し、それを指標に、人の免疫力を判定するようにしたのです」

 結果は、免疫力年齢、Tリンパ球の年齢、免疫力スコア、免疫力グレードで示される。年齢は若いほど、スコアとグレードは数字が大きいほど、免疫力が高い。

「たとえば、69歳の男性は、免疫力年齢が55~58歳、Tリンパ球年齢が46~48歳、免疫力スコアが24段階の23、免疫力グレードはⅣ(5段階)で、『安全圏』という判定でした。61歳の女性は、免疫力年齢が72~75歳、Tリンパ球年齢が63~66歳、免疫力スコアが24段階の17、免疫力がグレードIIIで、『要観察圏』でした」

 免疫力は、細菌やカビ、ウイルスなどの感染、そしてがんなどから身を守るシステムだ。免疫力が低下すると、感染症やがん、動脈硬化による脳血管障害、心疾患のリスクが高まることが研究で明らかになっている。

「平成24年度の日本人の死亡順位は、1位がん、2位心疾患、3位肺炎、4位脳血管疾患です。しかし、死後の解剖所見で見ると、高齢者の死因のトップは肺炎などの感染症。これらに対抗するためには、免疫力を上げることが不可欠。免疫力は加齢とともに低下しますが、ストレスや食生活などの環境因子の影響も大きく、人によってその低下の度合いが異なります。免疫力の評価法は、自分の現状がどうなのかを知るのに役立つのです」

 現在、全国48カ所の医療機関でこの評価法が取り入れられている。単独で行っているところもあれば、ほかの健診などの一環として行っているところもある。

「評価法を希望されるのは、大病を患った人、がんの人、現在病気治療中の人などが多くを占めています。加齢による免疫力低下は免れませんが、生活習慣改善で免疫力を上げることは可能です」

 免疫力アップにつながると分かっているのは、食生活では善玉菌を増やす食物や活性酸素を減らす抗酸化作用のある色とりどりの食品を取ること。さらに適度な運動、ストレス解消など。評価法で年齢以上に免疫力が低いことを知り、生活習慣改善に積極的に取り組むようになる人は珍しくない。

 ネックは値段の高さか。健康保険が適用されないので、医療機関にもよるが、2万円近くかかる。

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