ここ数年、女性を中心に「酵素」がブームになっている。健康、美容、ダイエットに効果があるといわれているが、本当に効くのだろうか。
代謝を活発にすることでキレイにやせる。老廃物を体外に排出してアンチエイジングに効果的。血液をサラサラにして病気を防ぐ…。
ちまたで数え切れないほど発売されている酵素ドリンクやサプリメントのうたい文句だ。
野菜や果物などに含まれている酵素を濃縮させたドリンクやサプリを毎日飲むと、さまざまな素晴らしい効果があるという。
■体内には3000種類に及ぶ酵素
たしかに、酵素はわれわれが生きていく上で欠かせないものだ。体内では3000種類に及ぶ酵素がさまざまな働きをしていて、消化を助けたり、栄養分を運搬したり、代謝を活発にしたり、ホルモンを活性化させたり、すべての生命活動に関わっている。
そんな重要な酵素が加齢や生活環境などによって減少してしまう。
不足すると体に悪影響を与えるので、外から補充してあげれば健康や美容に効果がある。
これが、健康食品として売られている酵素の“理屈”だ。
だが、酵素そのものを口から摂取しても意味がないという。
「食と栄養 常識の落とし穴」などの著者で、東北女子大教授の加藤秀夫氏(時間栄養学)はこう解説する。
「酵素はタンパク質で構成されています。タンパク質は胃の中に入ると消化液によって分解され、小腸でアミノ酸になって吸収されます。つまり、酵素そのものを口から飲んでも、胃の中に入ればただ単にタンパク質を摂取したのと同じこと。肉や魚を食べているのと変わりません」
体内でさまざまな働きをしている酵素はそれぞれ役割が決まっていて、必要に応じてつくられる。
「たとえば、代謝酵素が不足しているからといって酵素そのものを口から摂取しても、胃の中ではタンパク質として処理されるだけです。そのタンパク質を材料にして、こちらが望む代謝酵素がつくられるわけでもありません。豚肉を食べても、人は豚にはなりませんからね」
酵素は体の中でつくられる。酵素を補うなら、材料となるタンパク質を食事からとればいい。
■味噌、醤油、納豆、ヨーグルトなどに多く含まれる
「タンパク質が豊富に含まれている肉、魚、豆腐、タマゴをしっかり食べていれば十分です。また、ビタミンB群などのビタミン類は〈補酵素〉として体内で酵素の働きを助けるので、きちんと摂取するのがお勧めです。味噌、醤油、納豆、ヨーグルトなどの発酵食品には食物酵素が多く含まれています。胃の中に入ると酵素は分解されてしまいますが、よく噛んで食べれば消化酵素の働きを助けます」(加藤教授)
もちろん、それでも酵素ドリンクやサプリで元気になった! という人もたくさんいる。酵素ドリンクやサプリの種類はたくさんあるが、野菜や果物を原材料にしたものが多い。その栄養素やビタミンなどが含まれているので、それが効果的な場合もある。また、思い込みによって快方に向かう「プラセボ効果」があるのも事実だ。
効果が実感できているなら無理にやめる必要はないが、すすんでとるべきかは落ち着いて考えよう。