創業145年の老舗薬局に聞いた 「漢方薬」素朴な疑問

お疲れ気味なら/(C)日刊ゲンダイ
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 漢方薬を使いたいけど、あまりよく分からないという人は多いだろう。明治2年創業の老舗漢方薬局「高島堂薬局」の戸田哲司管理薬剤師に、漢方薬に関する素朴な疑問をぶつけた。

――日本の漢方と中国の漢方は同じ?

「中国では漢方といわず、『中医学』などと呼んでいます。日本の現在の漢方の本流は、江戸時代に生まれた『古方派』で、先人の書物に記載されたやり方で効果のあったものだけを残そうという実証的・経験的な医学です。病気の見立てに対する考え方が、近代の中医学とは異なります」

 日本の漢方の特徴は、「症状重視」だという。

「葛根湯は、無汗で首・肩がひどく凝り、頭痛や寒けなどの身体症状がある時に用います。西洋的な病名が、風邪でも結膜炎でも歯周炎でも、身体症状が同じであれば葛根湯が用いられます。一方、中医学の場合は、おのおのの症状を東洋的な病名に整理し、その原因となる臓器に親和性のある薬物を選び、処方することになります」

 実際の現場では症状、気質、生活スタイルなど事細かに聞き、幾通りもの道筋をたどって適した漢方薬を処方するので、ごく単純に表現するなら――ということだが、「処方された漢方薬が同じでも、日本の漢方と中医学とでは、〈なぜそれを選んだか〉が違ってくる」とのことだ。

「日本で東洋医学をやっている薬剤師がみんな、日本の漢方を学んでいるわけではありません。師事する先生などによって違います。自分に合った薬局、薬剤師を選ぶことが大切です」

――中国で購入した漢方薬は飲んでも問題なし?

「安全性の十分な検査を介していなかったり、表示されていない成分が入っていたりする可能性があります。偽物も多く流通しています」

 日本で購入した方がよさそうだ。

 漢方薬を構成する生薬は、土地特有の気候風土に育まれるため、伝統的によい産地というものがあった。しかし、中国の経済成長に伴う環境汚染や工業化、土地の砂漠化などで、良品とされてきた場所の生薬が手に入りにくくなってきている。

「生薬の質も、よいものが以前より少なくなったと感じることが多く、どこの産地がいいと言える時代ではありませんが、日本の生薬の各卸問屋は、よい品質の安定供給と安全性確保に力を注いでいるので、過度に心配する必要はありません」

■いい生薬を売っているかは、薬局で違う

――エキス剤や丸薬と比べて、漢方薬を煮詰める煎じ薬の方が効果が上?

「即効性は煎じ薬の方が上。エキス剤は添加物などの混ぜ物が入っていて、香りや味が薄い。香りで症状が良くなる場合もあり、その点も煎じ薬が上。ただ、慢性病で体の奥にじっくり効かせたい時や、慢性的な症状には丸薬が向いていることもあります」

 漢方薬は、効果が出るまで時間がかかると思っている人もいるだろう。

「漢方薬は急性期の症状には1~2服で効果が出てきます」

――高血圧や糖尿病などで慢性的に薬を飲んでいる場合でも、OK?

「お話を伺って、問題のない処方の仕方をします。病名に関係なく、体の不具合を漢方薬で改善していく中で、服用している西洋薬をやめられるケースも多々あります」

 漢方薬には健康保険が適用されるものも。どうせ買うなら安いに越したことはないが――。

「西洋薬は、先発品でも後発品(ジェネリック)でも、健康保険で出てくる薬の主要成分に変わりはありません。ところが生薬は天然物で、味や香り、成分の濃度が異なることがあります。いい生薬を扱っているかは、薬局によります」

 信頼できる店を選ぶことだ。

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