前向きな患者さんに対する時も、医師は確かなエビデンスに基づいたさまざまな治療を考察し、今の時点で考えられるベストな方法を選択しなければなりません。その結果、患者さんが多少満足できなくてもそれはそれで受け入れてもらい、医師自身も後悔はしない。そうした“最大公約数”を探すことが大事なのです。
われわれ医師の世界には、「穴馬を狙って一獲千金」という発想は必要ありません。絶対に「本命馬」で勝負しなくてはいけない。本命馬をよくよく調べてみたらこんな穴があったという時にだけ、「対抗馬」に切り替えればいいのです。
しかし、時に「大穴」が激走したり、パチスロでいえば「低設定なのに爆発してしまった」といったことが起こるように、医療の世界でも、例外的に非常にうまくいったケースとか、逆に本来ならうまくいかなければいけないのに結果が悪かったといった事態は起こります。それでも、外科医はすべて計算した通りにパーフェクトに処置を終わらせることが理想です。大穴を気にして脇目を振ることなく、それを着実に続けていかなければいけません。
これは、ギャンブルや対戦型スポーツで勝つための方法論と同じです。過去の統計に基づく確率に裏打ちされた勝負の理論は、医療の世界でも結構、役に立つものなのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」