医療用語基礎知識

【視力検査】「1・0」はどのぐらい目がいいのか?

 子供のころから毎年のように受ける視力検査。お玉のようなもの(遮眼子)で片目を覆い、数メートル向こうの壁に貼られた紙(視力表)のCの字(ランドルト環)の切れ目が、上下左右どちらに向いているかを当てる検査です。何を測っているのでしょうか。

 視力は「視角」と呼ばれる数字をもとに計算されます。視角とは、目の中心と、見ている対象物の両端を結んだ直線がなす角度。そういうと難しそうですが、要するにどのくらい大きく見えるかを表す数字です。

 しかし単に大きい、小さいと言ったのでは、正確な比較ができません。そこでさまざまな大きさのCの字を用意し、その切れ目の部分が向いている方向を見分けられるかどうかで、視角を測定しているのです。

 実際の視力表には、計算の手間を省くために、視角ではなく、視力そのものが印刷されています。ですから視力1・0と言われても、どのくらい目がいいのかピンときません。視力1・0に対応するランドルト環の切れ目の幅は、1・5ミリです。これを5メートルの距離から見分けられれば、視力1・0と判定されるのです。つまり、視力1・0の人は、5メートルの距離から、1・5ミリの大きさのものを見分けることができる、というわけです。

 では、視力2・0ならどうでしょうか。答えは視力1・0の半分の大きさ、つまり5メートルの距離から0・75ミリのものまで見分けることができます。逆に視力0・5の人は、2倍の3ミリまでしか見分けられません。さらに、視力0・1なら15ミリ(1・5センチ)まで。「見えるものの大きさと視力は反比例する」と定義されているため、少し数学が得意な人なら、簡単に計算できるはずです。

 たとえば視力0・01の場合、視力1・0の100倍の大きさ、つまり5メートルの距離から、15センチの大きさのものが見分けられることになります。

 ちなみに1円玉の直径は20ミリ、500円玉は26・5ミリです。地面に落ちた硬貨を探すには、やはり目がいいほうが有利といえるでしょう。

 ところで、普通の視力表は、視力2・0までしか対応していません。そのため世間では、視力の上限は2・0と信じられています。しかし視力の定義にしたがえば、もっと高い人がいても不思議ではありません。実際、アフリカのマサイ族は、高い視力で名をはせています。視力5は当たり前、なかには7や10の人もいるとか。

 とはいえ目の構造上の限界がありますから、解剖学者などは、生物学的にはせいぜい3か4までが上限ではないか、と言っています。実用上は、視力2・0まで測れれば十分ということなのです。
(医療ジャーナリスト・やなぎひさし)

やなぎひさし

やなぎひさし

国立大学理工学部卒。医療機器メーカーの勤務を経てフリーへ。医療コンサルタントとして、主に医療IT企業のマーケティング支援を行っている。中国の医療事情に詳しい。