阿藤快さんも訴えていた 「背中の痛み」が教える重大病サイン

「背中が痛い」と周囲に漏らしていた(C)日刊ゲンダイ

 先週、まだ69歳だった阿藤快さんの突然の訃報に驚いた人も多かっただろう。死因は「大動脈瘤破裂胸腔内出血」で、このところ阿藤さんは「背中が痛い」と話していたという。60歳を越えたら、背中の痛みには注意したい。

 大動脈瘤破裂は、心臓から全身に血液を送り出す動脈にできた瘤が破れる病気だ。瘤の直径が5センチを超えると破裂する可能性が高くなり、出血によってそのままショック死することがほとんど。致死率は90%以上といわれている。

 阿藤さんは、破裂によって胸腔内に血液が流れ込み、そのまま帰らぬ人となった。直前までドラマに出演するなど元気な姿を見せていたというから、まさに突然死だった。

■「背中が痛い」は大動脈の危険信号

 これといった前兆がない場合もあるが、阿藤さんは「背中が痛い」と周囲に漏らし、マッサージを受けていた。背中の痛みは、動脈に関係する重大病の“サイン”のひとつだという。東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授はこう説明する。

「動脈の血管の径が正常の1・5倍、40ミリ超に膨らんで瘤になったものを大動脈瘤といいます。多くの場合、ただ瘤があるだけなら、痛みなどの自覚症状はほとんど出ません。瘤が大きくなって血管の壁が裂け、血液が入り込む解離が起こったときや、破裂する際に背中や胸に激痛が走ります。阿藤さんの場合、まず瘤に小さな解離が起こって痛みが一時的に出たあと、再度の解離から破裂に至ったことも考えられます。解離した部分に流れ込んだ血液が血栓になっていったん痛みが治まる。ジワジワした痛みを繰り返してから破裂するケースもあるのです」

 背中や胸の痛みも、心臓や血管などの臓器の痛みも、いずれも脊髄を通って脳に伝えられる。このとき、痛みが起こっている箇所を脳が取り違えると、一見、関係のない箇所に痛みを感じる。心筋梗塞で肩やあごが痛むのも同じケースで、「放散痛」や「関連痛」といわれる。

■60歳を越えたら要注意

 背中の痛みは、筋肉、関節、神経のトラブルによるものが多い。それだけで病院に足を運ぶ人は少ないだろう。しかし、60歳を越えて背中に痛みがあったら、致命的な重大病かもしれないということを頭に入れておいた方がいい。

「とりわけ、高齢で高血圧、糖尿病、高コレステロール、喫煙歴があったり、家族に心血管病で突然死した人がいれば、循環器内科などでしっかり検査を受けてください。大動脈瘤は、動脈硬化の進行によって生じます。加齢や生活習慣などによって、動脈硬化は促進されるのです。さらに背中に痛みがある人は要注意です。痛みが治らない時は緊急検査を受ける必要があります」

 検査にも注意が必要だ。一般的な健康診断などで行われるような1方向のレントゲン検査では、大動脈瘤が見逃されてしまうことが少なくないという。

「リスク因子がある人は、胸のレントゲン撮影は正面と側面の2方向にしてもらったり、心臓超音波、CT検査、MRI検査などを一度は受けることをおすすめします」

 健診で異常なしと診断された人が、1カ月後に大動脈瘤破裂で亡くなるなんてケースもある。動脈硬化のリスク因子がある人が背中に痛みを感じたら、ぐずぐずしているヒマはない。

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