医者も知らない医学の新常識

バイアグラで糖尿病が予防できるのか

 バイアグラ(シルデナフィル)は、勃起不全の治療薬として承認されている薬です。この薬は一種の血流改善剤で、ペニスの海綿体の血流を増加させることにより、勃起不全を改善します。しかし、その効果はペニスにとどまるものではありません。実はバイアグラのようなタイプの薬には、メタボを予防するような効果があるのです。

 肥満で内臓脂肪が蓄積すると、血糖を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなります。これをインスリン抵抗性といって、糖尿病や動脈硬化の大きな原因です。

 最近の研究によると、バイアグラのような薬には、このインスリンの効きを良くする働きがあるようです。それが本当であるなら、「バイアグラを使うと糖尿病や動脈硬化が予防できるかもしれない」ということになります。

 今年のホルモンや糖尿病専門の有名な医学誌に、肥満の方にバイアグラを3カ月間使用して、その効果を検証した論文が掲載されました。

 これは毎日少量のバイアグラを、1日3回に分けて3カ月、毎日服用してもらうのですが、服用しない場合と比較して、3カ月でインスリンの効きが明らかに改善したのです。そればかりか、血の塊をできにくくするような作用や、腎臓の機能低下を予防するような作用もあることが同時に明らかになりました。

「バイアグラを毎日飲み続けて大丈夫なのか」と不安に感じる方もいるかも知れませんが、量が少ないので問題はないようです。バイアグラが、動脈硬化や糖尿病の予防のために使用される時代も、そう遠いことではないかも知れません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。